Jewelry sommeliere

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津延美衣(つのべみえ)NY州立大学FIT卒業。米国宝石学会鑑定有資格者(GIA-GG,AJP) 運命学・自然医学・アート・アロマテラピー・食文化などの知識を元に感動的な人生を描くプランナー・エッセイスト・キュレーター兼ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere) 美時間代表。

2015年11月9日月曜日

週間NY生活No550 8/22/2015「人生の放課後8」

                         シニア層は片付けが苦手

  現代社会の真骨頂はほとんどの家庭でモノが溢れ返り、それらが家の中を占領していることだ。加齢と共に片付けが億劫で先延ばしになり、何処に何を置いたかも忘れ、再度同じモノを購入してはモノが増える。贈答品の箱山だけでなく、商品やお弁当など購入時の紙袋から割り箸まで取って置く始末。モノにつまずき転んで骨折したり、上の棚からモノが落ちてきて怪我をしたりといった事態になっても、どこをどうやって片付けたら良いのやらわからない。そんな悩みを抱えたシニア層が急増しており、部屋の片付けを指南するプロや書籍も増え、テレビでは特集を組むようになった。
  まず片付けの基本は数年間使用しなかったモノを処分すること。だがそれが儘ならない。一番の理由は「もったいない」からで、「いつか使うだろう、着るだろう、読むだろう」という先送りの考えだ。そもそも「もったいない」は和製漢語「勿体」を「無し」で否定した言葉であり、「妥当でない」「不届きだ」という意味で用いらた。転じて、「自分には不相応である」「ありがたい」「粗末に扱われて惜しい」などに広がった。環境保護活動家でノーベル賞受賞者のワンガリ・マータイが約10年前、環境問題を考える際の重要な概念として「もったいない」という言葉を使用し、世界共通の言葉となったことは知られている。
  テレビを観ていたら、片付けの達人が緑寿と古希を迎えた夫婦を訪ねて実際に部屋の整理整頓を手伝っていた。時間の経過と共に部屋はまるで集中ダイエットをしたかのようにスッキリとした。埃を払われた主人の両親の写真も棚の上で満足そうだ。長男ではないので仏壇を持たないが、「それに代わるコンパクトな祭壇があったらなあ・・」とつぶやいている気がした。

2015年9月8日火曜日

週間NY生活No.546 7/25/2015 「人生の放課後7」

                         シニア層のペット事情

  平成26年度の全国犬猫飼育実態調査によると、飼育率でいうと猫は約996万匹、犬は約1035万匹で、おおよそ日本の約16%の人が飼っている計算になる。昨今、子ども(15歳未満)のいる家庭よりもペットを飼育する家庭のほうが多いのだ。これは飼育環境が良くなったことや、少子高齢化により、犬や猫がペットから生活に喜びを与えてくれるパートナー的存在に変化してきたからである。飼育状況を年代別でみると50~60歳代が最も多く、ペットを飼う効用を聞いてみたところ、「生活に潤いや安らぎを実感できるようになった」「孤独感を感じなくなった」「情緒が安定するようになった」「夫婦の会話が多くなった」など、健康面や精神面そして人と人をつなぐコミュニケーションのきっかけとして重要な存在であることも明らかになった。いわゆる犬猫といえども立派な家族の一員なのだ。それを物語る代表的なケースは、ペットの犬に巨額の遺産を相続させたというニューヨークの大富豪夫人の話だ。

  最近、日本でもペットのための遺言書を作成するシニア層が出てきた。実際には直接ペットに遺言書を残すことは不可能なので、信頼できる人間にペットの為の世話や財産管理を任せることによって、ペット自体の所有権を相続して将来を見てもらうのだ。一方、ペットと一緒に入れる墓も増えてきた。犬の平均寿命は13~17年、猫は15~20年といわれるのでおのずと先に死んでいく。そこで、ミニ骨壷に遺骨を保管し将来自分の没後一緒に葬ってもらうという寸法だ。そういえば、かつてわたしがニューヨークに住んでいた頃、隣人は犬や猫を漏れなく飼っていた。その一人が放った言葉が印象的だった。「愛するこの子は神様からの贈り物なの。"DOG" を逆から読むと"GOD"よ!」。

週間NY生活No.542 6/27 2015「人生の放課後6」

                           支援活動を待つ「お一人さま」

  日本で約600万人を数える高齢者の「お一人さま」が人生の放課後を謳歌できるのは、ある程度健康を保っているからだ。内閣府が平成24年に行った全国55歳以上の男女高齢者の健康に関する意識調査によれば、現在の健康状態が普通ないし良好、また生きがい(喜びや楽しみ)を感じるといった人々が8割強にも及んだ。その割には病院に1ヶ月に1回以上通っている人が世界的に見ても多いのは高齢者への支援活動が活発化しているからだといえる。またその人達に認知症が多いのも事実だ。
   厚生労働省の調査によると、2012年に約470万人に達した認知症の高齢者が10年後には1.5倍に増える見通しとなり、そこで各界の有識者、地域の暮らしを支える企業・団体や保険・医療・福祉団体などが「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」を発足させた。それに応じて日本全国に約53000店舗(2015年)を占めるうちの大手コンビニも、高齢者を支援するサービスを開始した。注目すべきは地域の自治体と提携した見守り活動を兼ねた宅配だ。出来合いのお弁当やお惣菜を届けるだけではなく、「お身体に変わったことは無いですか?」などと安否を確認したり、「今度おでんを持ってきて欲しい」「郵便物をポストに入れて欲しい」などの要望も受け入れる。最近話題になっている「ドローン」による宅配サービスの提案も出ているが、マンツーマンによるサービスには敵わない。ある高齢者によると、1人暮らしにとって会話をするのは亡くなった妻の写真に向って手を合わせる時だけ。だから宅配の人と1日にほんの数分でも話すことが楽しいという。また「お一人さま」が亡くなっているのを発見することもある。彼らによる通報が半年で70件以上にも及ぶというから驚く。

2015年8月1日土曜日

週間NY生活No538 5/23/2015 「人生の放課後5」

       「お一人さまに熱い視線」
                          
 日本の総人口に占める65歳以上の高齢者が「4人に1人」と増加の一途を辿るなかで「お一人さま」が全国約600万人にのぼる。地方で加速する「お一人さま」をターゲットにしたサービスやビジネスに注目し、地方の自治体ではシニアカードを発行して様々な割引特典を設けて彼らを取り込んでいる。一方、都心部でも「お一人さま」に熱い視線が向けられ、彼らが演奏したり歌える参加型のライブバー(あらゆるジャンル)が増えた。
   24時間営業のコンビニでは「お一人さま」用のお惣菜や日用品、お弁当を提供する。1日3回訪れるという年配の女性は「うちの冷蔵庫のようなもの」と得意満面に微笑む。同じく喫茶店もシニアシフトを始めた。ゆっくりと寛げるかつてのスタイルで、朝7時の開店と同時に近所のシニアで賑わう。朝刊に目を通して珈琲のアロマに包まれながらモーニングセットの厚切りトーストにかぶりつく。お昼になれば読みかけの本にしおりを挟み、銀皿に盛られたケチャップの甘い匂いが踊るナポリタンを口いっぱいに頬張る。ここで過ごす時間は貴重だという。
   シニア向けビジネスで大成功を収めているのが一人旅プラン。日本独特の出張用ビジネスホテルが会社の経費削減で空室が増えた。そこに目をつけた旅行代理店が、格安「お一人さま」パック旅行を打ち出すと反響大で老舗旅館もそれに応じた。古希を迎える宿泊客の女性の胸元で、半年前に他界した夫の遺灰を忍ばせたペンダントが揺れる。生前はいつも家にいて鬱陶しかったが、いざ一人になると何かと不自由なことが多い。夫の有り難さが解り、愛おしいさから今では何処でも一緒という。「お父さんありがとう。これからも残りの人生を一緒に楽しみましょうね」と呟いた。

2015年6月2日火曜日

週間NY生活No.534 4/25/2015 「人生の放課後4」

      「団塊シニア層の夫婦の一人ひとり」

  団塊シニア層の夫婦は自分自身を見つめ直すためお互いに距離を置き始めると言われる。まず同じ寝室内でベットや布団を共にすることを避け、長じて子供が独立して空いた部屋にどちらかが移動し、共有の時間は食卓やリビングで持つ。また空き家になった両親の実家や、現役時代に購入したセカンドハウスに片方が移り住むこともある。法的には夫婦の関係を保ちながら、同居にこだわらず互いの自由を尊重して暮らすスタイルのを「卒婚」というが、双方が健康であれば成立する。

  「卒婚」に関してテレビが50歳以上の1500人に実施したアンケートによれば、半数以上の女性は関心あり、家事からの解放と夫との距離を持ちたいという。一方、男性は興味ない人が半数以上に達し「卒婚を考える妻はエゴの塊、夫婦は死ぬまで一緒」と多くの反発意見があったとは、ニールヤングのヒット曲「a man needs a maid 」の世界観だ。男女の考え方に温度差があるのは確かだし、それは墓問題にも繋がる。全国の既婚女性880人に行ったテレビの調査によると、10人に6人が夫の墓に入りたくないと回答。その理由は「知らない先祖と一緒は嫌」が最も多く4割で、次に「遠い・縁のない土地にある、夫の家族が嫌い」と続く。この結果を踏まえて既婚男性約1300人に「夫婦は一緒の墓に入るべきか?」の問いに6割強が「そう思う」と答えた。更に実況中継では「死ぬ時くらい自由にさせて!遺灰は海に蒔いて」という妻に対して夫は「そうは行かない」と反論。結論は、妻が先に逝ったら遺骨の一部をミニ骨壷に入れて保管し、その後、夫の墓に一緒に埋葬することで妥協する。夫婦の覆水盆に返らず、溝を流るだ。

ワイン王国No.58

    シャンパーニュとダイアモンド

 シャンパーニュを飲む度に、グラスの中でダイアモンドがキラリと光るような気がする。というのも、ダイアモンドが誕生する時と、シャンパーニュを開栓したときに勢いよくボトルからはじけるコルクの状況が似ているからだ。
 諸説あるが、ダイアモンドは高温・高圧の条件がそろった、ある限られた地域のマントルと地表の間で育つ。鉱物の中では珍しく炭素100パーセントの成分からなり、その炭素原子は自然界に存在するほかのどの物質よりも硬く結びついている(それで婚約指輪に用いられる)。その後、数億年から数十億年も地中に眠り、マグマの上昇に伴い母岩に包み込まれて勢いよく上昇し、マグマ内の膨張した気体が大部分水蒸気と二酸化炭素になり(シャンパーニュのボトルを振ったときの気体と同じ状態)、この強力な気体の膨張と噴出速度によりダイアモンドが地表に誕生する。もしもダイアモンドが上昇していく旅の途中、圧力が下がった状態で長時間高温にさらされると、これが運命の分かれ道となり、皮肉にもグラファイト(炭)に変質してしまう。
 ブッタが悟りの境地について、’’金剛心=ダイアモンドを得た心’’と表現したと言われるくらい、ダイアモンドはすべてを貫く純粋な透明感と輝きを放つ炭素の塊。それが人々の手によりファセットカット(宝石の加工方法)され、7色のスペクトルをすべて包括し光り輝く美の完成に達するまで多くのプロセスを経る。その昔、偶然生まれた泡立つワインから始まったというシャンパーニュ造りも、同じく人々の手により試行錯誤をくり返しながら究極のご褒美になった。ともに、ガイアである地球が生み出したものを、人類が悠久の時を経て完成させた最高傑作であり芸術品だ。
 ところで、私が初めてシャンパーニュを口にしたのは、かつてニューヨークに留学していたころ。サンクスギヴィング(感謝祭)当日、隣人夫婦のセカンドハウスに招かれた。素晴らしい欧風の絨毯と織物のソファー、主人の趣味である見事な刺しゅうと置物に囲まれ、暖炉の火がゆらゆらと燃えた、まるでおとぎ話にでも登場しそうな部屋で、勢いよくシュポンと栓が抜かれたボトルから、黄金色の液体がフルートグラスに注がれた。当時は銘柄など全く気にも留めなかったが、彼が取っておきのシャンパーニュだと話してくれたことが頭の片隅に刻まれている。細かくクリミーな泡が途切れることなく、グラスの底から立ち上がってくる不思議な飲み物を口にした時の感動と、アッという間にのどに消えた後にいつまでも続く心地よい余韻は忘れられない。
 今も毎年訪れるニューヨークでの楽しみのひとつは、膨大なシャンパーニュがストックされた専門店で、日本では入手しにくい銘柄やお気に入りを買い求め、それとマリアージュする料理を作り、友人らと晩餐を楽しむこと。

 ともあれ、グラスに注がれたシャンパーニュを見る度に感慨深くなる。それはロゼを除いた色合いにおいて、「ほとんどが、わずかに黄色味または茶色味を帯びており、ライトイエローが多い」というダイアモンドの価値を決める4C(carat、cut、color、clarity)のひとつであるカラーの定義と似ているからだ。

2015年5月20日水曜日

週間NY生活No530 3/28/2015「人生の放課後3」

      「放課後を楽しむ団塊世代富裕層」

 数年前から65歳を迎えて本格的な余暇生活に入った団塊世代は、年金を額面通り受給できる最後の世代だ。日本の個人金融資産も米国に次ぎ世界第2位で、その約6割を60歳以上の富裕層が占める。内閣府で行われた意識調査(平成23)によると、彼らの世帯1人当たりの総所得(平均世帯数1,56人)は197,4万円(公的年金、恩給が67,5%)で、全世帯(2,68人)の200,4万円と変わらない。貯蓄率に至っても1番高く、全世帯の16,64万円を上回る22,57万円(65歳以上)。その上、9割が持ち家である。負債も少なく暮らし向きに心配がないと答える人が70%に及ぶ。特に女性の経済的余裕度は男性よりも高い。


 男女共に趣味や楽しみは、テレビ・パソコン・旅行が上位を占める。以下、男性は散歩・新聞・雑誌と続き内向き傾向を見せるが、一方で女性は家族との団欒・買い物・友人、仲間との交際など外へと向かう。例えば、お洒落な女性が銀座中央通りに面した建物の中に次々と向かう先にあるのが女性専用健康麻雀教室。テレビでボケ防止と推奨されてから反響が大きく、賭けない・吸わない・飲まないが鉄則で、午前中から夕方まで先生に麻雀を教わり、その後デパートで買い物をして帰宅する。私も参加してみたことがあるが、団塊世代中心のご婦人方が真剣な眼差しとしなやかな指で雀士の如くパイを追う姿は新鮮だ。そして胸元には輝く宝石で象ったペンダント。伺ったところ、溺愛した亡き犬を片時も忘れないために写真を入れているそうだ。昼食時になり、各人が持参した彩り豊かなお弁当を広げて始まったお喋りに誘われたとき、このような華麗奔放な生き方もありかなと感じた。