Jewelry sommeliere

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NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2019年11月6日水曜日

週刊NY生活No745 10/19宝石伝説21ティファニーの「歴史と伝説的なジュエリー」3

         ティファニーの「歴史と伝説的なジュエリー」3

  現在ではエンゲージメントリングのスタンダートスタイルになっている、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドをできる限り小さく仕上げられた6本爪で石留めする方法は、1886年にティファニーによって考案され「ティファニーセッティング」と名付けられた。それにより、あらゆる方向から光が入り、輝きと美しさが一段と増すと同時に、見る人の視線をセンターのダイヤモンドに集中させ際立たせることを可能にした。
  1902年、チャールズ・ルイス・ティファニーの息子であるルイス・コンフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany)は、社内にアートジュエリー専門部門を創設しデザインディレクターに就任した。アートに造詣のあった彼はジュエリーだけではなく、自然や異文化からデザインを取り入れ、そして斬新なジュエリーとエナメル工芸品を発表していく。
  1926年、アメリカ合衆国の政府はティファニーが導入しているプラチナの純度基準を、国の公式な基準値として認可するほど、米国内でティファニーの影響力は高まっていく。1940年には、現在のニューヨーク5番街57丁目に移転し、エントランス上部には時計を担ぐ巨神アトラスの像が掲げられた。そして1972年、ティファニーは日本に進出を果たす。

  ところで、ティファニーには人気を支えてきた伝説的なデザイナーたちがいる。その一人、20世紀を代表するジャン・シュランバージェ(Jean Schlumberger)は1907年フランスアルザスの由緒あるテキスタイルメーカーの一家に生まれ、のちにニューヨークに移住。その後1956年ティファニーにパートナーとして正式に加わった。ウイットと好奇心に富んだ魅力的な作品で知られ、貴重なジェムストーンの独特の色彩を生かしながら自然の神秘を美しく力強いデザインに込めて創作していく。1995年には、「ティファニー イエロー ダイヤモンド」のデザインに採用された彼の代表作となる「バード オン ア ロック」が完成した。プラチナとゴールドの枠にホワイトとイエローのダイヤモンドが配されたボディとルビーの目を持つ美しい鳥をダイヤモンドにマウントしたブローチだ。実際にニューヨーク本店にてその作品を鑑賞したが、まるで異次元から幸せを運んで来た鳥が煌めきを放っているように感じた。

週刊NY生活No741 9/21宝石伝説20ティファニーの「イエローダイヤモンド」2

           ティファニー の「イエローダイヤモンド」2

  1878年ティファニーは、高品質ダイヤモンドを求めて世界中から多くの人々が押し寄せていた南アフリカのキンバリーで採掘された世界で最大級(287,42ct)のファンシー イエロー  ダイヤモンドを手にする。そしてこのダイヤはパリに送られた後、ティファニーに入社したばかりのジョージ・フレデリック・クンツ(George Frederick Kunz)(彼は後に自分の名前を冠する「クンツァイト(鉱物名 スポジュメン)色合いはピンク・スミレ色がかったパープル」という宝石の鑑別と学術的発見をし、ティファニーの主任宝石鑑定士となる)に委ねられ、あらゆる角度からの観察と研究を重ね1年間が費やされた。そして宝石のもつ美しさを引き出すために多くのファセットが施され、通常のブリリアントカット(58面)より24面多い82面(多面によるファセットは、光を更に反射させるためではなく、イエローダイヤモンドの特性を生かし、宝石の中で火が燃えているような効果を見せるためだといわれる)のクッションシェイプ(128,54ct)にカットされ、ティファニーの歴史と技術を物語る世界有数の「ティファニー ダイヤモンド」が誕生する。
  通常ダイヤモンドは殆どが黄色味がかっており、その色因は炭素以外の不純物原子の(私たちが呼吸する空気の大部分(78%)も占めている原素)窒素によるもので一般的だ。かたや、稀にその窒素原子が孤立したlb型と呼ばれ黄色味が強くなるとファンシー イエロー ダイヤモンドと呼ばれるものが産出されるが、そのうち色度・彩度・透明度の高いものは希少性が数段高くなる。
  このティファニーを代表するジュエリーは何度かそのデザインを変え、ニューヨーク本店にて展示されている。

  ちなみに、何度もデザインを変えたこの至宝が実際に着用されたのはわずか数回と言われている。1961年、映画「ティファニーで朝食を」のプロモーション撮影にて、リボン・ロゼットのネックレスにマウントされたものをオードリー・ヘップバーンが着用した。そして、今年の2月24日、カリフォルニア州ロサンゼルスで行われた第91回アカデミー賞授賞式にて、レディ・ガガは、漆黒のロングドレスに ティファニー ダイヤモンドがセッティングされたネックレスを身に付け登場した。煌めく胸元はさらに彼女の艶麗さを増幅させてレッドカーペットを飾った。