Jewelry sommeliere

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津延美衣(つのべみえ)NY州立大学FIT卒業。米国宝石学会鑑定有資格者(GIA-GG,AJP) 運命学・自然医学・アート・アロマテラピー・食文化などの知識を元に感動的な人生を描くプランナー・エッセイスト・キュレーター兼ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere) 美時間代表。

2017年2月2日木曜日

週刊NY生活No.613.1/1/17'「1月の誕生石ガーネット」

                  1月の誕生石ガーネット「柘榴石」

  カーバンクルとは丸く磨き上げられた赤い石のことをさす。それは、神によってソロモン王に与えられた貴重な4つの石の1つでガーネットだった。この石の持つ赤い輝きは、伝説上ノアの方舟に暗闇を照らす灯火の代わりに吊り下げられた。また血液関係の病気に使われ、持ち主に幸福と愛情をもたらすとされ、古代エジプトではファラオの首を飾った。古代ローマにて、この石と彫刻が施されたシグネットリングを使ってワックスにスタンプをして重要な書類を封印してきた。赤いガーネットは最も広く取引された宝石のうちのひとつである。ガーネットは鉱物名で、結晶が柘榴の種の形に似ており、ラテン語の種を意味する(グラナタス'granatus ‘)に由来する。共通の結晶構造をもちながら、少しずつ異なる成分をもつ多数の変種をかかえる巨大ファミリーだ。赤色に限らず、青色を除いたさまざまな色合いがあるとされていたが、近年に入ると光源の違いにより青色を発生する希少な変種も見つかった。また唯一、ダイヤモンドと近接する環境下で育まれるパイロープ・ガーネットは、ダイヤモンドの内包物として見つかることもある。

  作家・開高健の最後の作品になった『珠玉』。3種の宝石をめぐって著者本人の'人生の宝'を重ね合わせていく三題噺になっている。第2話で、縁ある人から深紅の「アルマンダイン・ガーネット」のカットの施された裸石をしばらく借りることになった。それをポケットに入れて持ち歩くとその明滅が気になり時間・場所を問わず、こっそり取りだしては深紅の燦光が手のなかで煌めくのを楽しむ。どうじに赤色に封じ込められていたいくつもの己の過去が鮮明に蘇ってくる珠玉の時間を手に入れるのだ。まさに'文房清玩'。こんな宝石の使い方もあったのだ。