山梨と宝石「コラボによる甲州貴石切子カットの誕生」9
甲州貴石切子カットを考案したのは、山梨ジュエリーミュージアムにて数ヶ月に一度宝石研磨体験の講師をされている深澤陽一氏。その昔、ドイツで有名な宝石研磨職人のムーン・シュタイナー氏の作品を見て感動し、自身でもそのようなものをいつか作りたいと思ったことが始まりだという。そのうちに浮かんできた切子カットの構想はいつも頭の隅にあったが、その頃それを作るだけの技術は身に付いておらず、実現に至るま約20年の歳月が過ぎたとのこと。ようやく形になってきたところで、同じく山梨県立宝石美術専門学校で教壇に立つ清水氏に切子カットの話しを持ちかけ、試行錯誤を繰り返しながら構想はやがて完成の一途を辿る。
製作工程は、最初にお決まりの原石から荒削りをして、オーバルやスクエアなど外側の形を決める。そこから切子文様の形を決めて石に放射線状の下書きをするが、この作業が綺麗な切子になるかどうかが決まる重要なポイントとなる。わずかな狂いも許されない、緻密で完璧な下書きが要求される匠だけがなし得る技だ。その後は、毛引きと呼ばれる描いた線の上に、細工台(彫刻機)で細い線を作っていく。そこから荒削りでV溝を作り、中摺りを経て仕上げ摺りをして磨く。この仕上がった切子面のあと、清水氏によりファセット面が出来上がるが、この工程は順番が逆のこともあり、お互いにカットの作業を開始し出来上がったら交換して仕上げていくという。
ちなみに、切子のデザインは昔からある日本の文様(斜格子、魚子、霧など)がベースで、5パターンある。また使用する宝石は、水晶など硬度が7前後が適しているという。