Jewelry sommeliere

自分の写真
NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2016年7月1日金曜日

週刊NY生活No.590.7/2/16'「7月の誕生石ルビー」

                       7月の誕生石ルビー「紅玉」

   古来から人間は 太陽・炎・血など生命力を連想させる赤い色にいち早く反応してきた。従って古代サンスクリット語の'ratnaraj'(貴石の王者)と呼ばれたルビーは、歴史的にも重要な色石である。名前の由来は'rubber'(赤色の石)というラテン語で、当時の赤い宝石の総称(赤いガーネットやスピネルなども)。英国王室の王冠に飾られた巨大な宝石 '黒皇太子のルビー' がレッドスピネルだったことは有名だ。東南アジア原産のルビーはオリエントだけではなくヨーロッパに渡り、護符・健康・長寿・富・知恵・恋愛成就をもたらす神に捧げられ、また身体に付けられてきた。
   ルビーがサファイヤと同じコランダム(鉱物)族と判明したのは、近世の宝石学の進歩による。そしてコランダムの中で、1~2%の'クロム'を含むことにより濃く赤い色調に変化したものだけをルビーと呼ぶ。
  ルビーは血液・心臓と共鳴して、体内の血行に大きく関係する諸中枢を浄化するといわれ、元気の源である第1チャクラと、愛や癒しの第4チャクラを活性化する。またダイヤモンドと同様、とくに質の良い大きめなルビーは、身に付ける者のエネルギー(善しも悪しも)を増幅させる。万が一、博愛精神に欠け強欲が過ぎると、この石から投影される'永遠の炎'をもって浄化されるという。

   作家フィリッパ・グレゴリーの小説『ブーリン家の姉妹』の中で、英国王ヘンリー8世の最初の皇后キャサリンの侍女だった妹のメアリーは愛に生きた。かたや富や権力全て欲した姉のアンは、王ヘンリーから大きくて立派だと思われたルビーを贈られるほどの間柄になる。やがて皇后の座を奪い、冷酷非道に走り出した矢先、処刑場が彼女を待っている。

2016年6月30日木曜日

週刊NY生活No.586.6/4/16'「6月の誕生石パール」

                        6月の誕生石パール「真珠」

    自然の中で育まれる真珠は、真珠層が醸し出す独特の反射光の強さと鮮明さによる眩いばかりの光沢に、太古の昔から人びとが最初に酔いしれた貴重な宝石だ。真珠質(粘膜)を分泌して真珠層をつくるが、真珠は生きものでその過程で苦痛が伴うという(諸説あり)。皮肉にもその繰り返しにより美しさを増すのだ。またアコヤ貝は海水真珠のなかで『真珠の王様』と呼ばれていた。主な生息地はバナナ・ベルト地帯で、古代ヨーロッパ・オリエントでは王族や貴族など特権階級の間でもてはやされ、日本では『魏志倭人伝』によると、卑弥呼の後を継いだ「壱与」が5千個の真珠(白珠5千孔)を中国の王朝に献上した。通常、丸くて美しい5千個の真珠を集めるには2千5百万個~5千万個のアコヤ貝が必要だったことから希少性がわかる。その後「御木本幸吉」など日本人らによる養殖技術が確立すると、一般の人にも安定した質の良い養殖真珠が手に入るようになった。

   宮尾登美子の著書『クレオパトラ』のなかで、最後の女王として熾烈な権力闘争の渦中に生きたクレオパトラは、内憂外患を一身に背負い込むと同時に、独りの女性として四苦八苦に見舞われるが(愛別離苦は特に彼女を深く傷つけた)、そのたびに彼女の魅力は増していった。アントニー(後の夫)との一国をかけた駆け引きで、耳につけていたプトレマイオス家に伝わる世界一の真珠を外し、それを酢に入れて飲み干すところは圧巻だ。真珠は身に付けている人のネガティヴな面を吸収し、美と健康にも良いとされる反面、自ら起こしたマイナスの力が本人にはね返るという。真珠好きの彼女は今わの際、因果応報の法則通りの結末を迎える。ちなみに真珠は直接肌に付けると良いとされる。