人生の放課後と葬送文化
日本では「団塊世代」(1947~49年生まれ)が戦後の高度経済成長を担い、49年生まれが65歳となり4人に一人が高齢者となった現在、彼らが再び経済活性化の中心を担うとされている。内閣府の「団塊世代」の意識調査によると、今の生活にある程度満足している人は67%で、生きがいを感じるのは趣味に熱中している時が一番多くて47,7%、次いで家族団らん、旅行と続く。貯蓄の目的は普通の生活を維持するための42,3%から将来の病気や介護が必要になった時、つまり万が一に備えるための53,9%に増えた。要介護になった場合に希望生活場所は自宅が38,2%、次いで介護老人福祉施設・介護老人保健施設・民間の有料老人ホーム30,2%と続く。だが、子供の家を望むのは0,6%と極めて少ない。というのも、「団塊ジュニア」と呼ばれる第二次ベビーブームに当たる1970年代前半生まれと、団塊世代の子供世代に当たる1970年後半に生まれた彼らは、就職する前後がバブル崩壊時期に直面しておりいわゆる「就職氷河期」に遭遇した「不運の世代」だからである。また結婚しても共働きが多く、親の介護をするほどの余裕がないのだ。
一方、近年では「団塊の世代」をターゲットとしたビジネス、すなわち「シニア向け分譲マンション」「高齢者専用賃貸住宅」「住宅型有料老人ホーム」「療養病床(介護療養型医療施設)」などが盛んになった。どれを選択するかは年金や貯蓄の額によって変わってくる。
時代の流れとともに家族形態も大きく変わった。国立社会保障・人口問題研究所が2014年4月に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、最も多いのが家族1人(お一人さま)の単独世帯となっており、全世帯の32,4%を占める。少子高齢化、晩婚化、非婚化などが原因である。それに関連して日本の葬送文化も大きく変化した。自宅またはお寺で執り行う葬儀から大型葬儀場に移り変わり、やがて現在のような家族葬が主流となった。「お一人さま」を支援するNPO法人もでてきた。最近は自由葬や自然葬(散骨葬、樹木葬、宇宙葬など)も話題だ。
お墓に関しても、寺院墓地から公園墓地、埋葬スタイルの多様化から個性的な墓石・室内墓地・永代供養墓・ペットと一緒に入る墓などが登場した。仏間に置く伝統型仏壇が欧米化した居住空間に家具調仏壇として置かれる。また、お墓を持たない人や墓参りがままならない海外を含む遠方居住者のために、新しい共養トレンドとして宗派や慣習に縛られない形の遺灰や遺骨の破片を入れるミニ骨壷や、身につけるタイプのジュエリー(遺灰を耳かき程度納める・遺灰でダイヤモンドや樹脂を作る)など、日常的に故人を偲び、手を合わせ語りかけられる手元供養が人気を呼んでいる。一般的に故人に対して「生前」という言葉を使うが、ここに日本人の思いやりの籠った死生観が伺える。地球の1部からなる肉体を感謝を込めてお返しすると同時に、供養という絆を通した愛情により浄化される魂はまた生まれ変わると。