シニア層の究極の棲家
1970年に入り、日本の65歳以上の人口比率が7%を超え「高齢化社会」の道を加速し始めた頃(現在は25%を越えた超高齢化社会)、旧国鉄中央線の車両に優先席を設けた。その愛称「シルバーシート」の語源は、高齢者の銀色の頭髪から来たと思いきや優先席にたまたま使用された銀色の布だった。そこから、忌避されてきた高齢者の呼称「年寄り」「老人」に代わり、「シルバー」が、ある学者の発案より、少し粋な「熟年」が誕生した。
そうした忌避感が残る「老人ホーム」には一般的に、年齢を重ねるに従い心身に問題が生じて日常生活に困難をきたすようになった親の面倒を見られない子供らが、やむなく親を入所させるケースが多いと見聞きする。数十年住み慣れた棲家から突然、全く知らない環境に移されるのだからボケも一気に進み、体調が悪化するのも当然だ。
「まだ頭がしっかりしているうちに自ら入居したくなるような施設があれば、人生の放課後も楽しめるのに」と思っていた矢先、田園都市線にある高級老人ホームの見学に誘われ、物見遊山で行ってきた。豪華なシャンデリアが吊るされた玄関が住人を迎え、病院・レストラン(軽い正装が基準)・バーカウンター・図書室・娯楽室・広場・庭(散歩や菜園も楽しめる)などを併設する高級集合住宅だ。一般居室は1LDKと2LDKの2タイプ (56㎡~100㎡)があり、そこから通勤している方もいる。(因みに現在は満室)夫婦で入居して片方の介護状態が重くなったときの介護居室もあり、併用でサポートしてくれるという。館内は廊下に掛けられた有名な絵画、陶器、アップライトピアノ、蔵書など入居者が寄付した逸品が七光している。面白いことに男性陣はT大とK大出身の派閥があり何かと競っていて、平和ボケとは無縁らしい(笑)。