「お一人さまに熱い視線」
日本の総人口に占める65歳以上の高齢者が「4人に1人」と増加の一途を辿るなかで「お一人さま」が全国約600万人にのぼる。地方で加速する「お一人さま」をターゲットにしたサービスやビジネスに注目し、地方の自治体ではシニアカードを発行して様々な割引特典を設けて彼らを取り込んでいる。一方、都心部でも「お一人さま」に熱い視線が向けられ、彼らが演奏したり歌える参加型のライブバー(あらゆるジャンル)が増えた。
24時間営業のコンビニでは「お一人さま」用のお惣菜や日用品、お弁当を提供する。1日3回訪れるという年配の女性は「うちの冷蔵庫のようなもの」と得意満面に微笑む。同じく喫茶店もシニアシフトを始めた。ゆっくりと寛げるかつてのスタイルで、朝7時の開店と同時に近所のシニアで賑わう。朝刊に目を通して珈琲のアロマに包まれながらモーニングセットの厚切りトーストにかぶりつく。お昼になれば読みかけの本にしおりを挟み、銀皿に盛られたケチャップの甘い匂いが踊るナポリタンを口いっぱいに頬張る。ここで過ごす時間は貴重だという。
シニア向けビジネスで大成功を収めているのが一人旅プラン。日本独特の出張用ビジネスホテルが会社の経費削減で空室が増えた。そこに目をつけた旅行代理店が、格安「お一人さま」パック旅行を打ち出すと反響大で老舗旅館もそれに応じた。古希を迎える宿泊客の女性の胸元で、半年前に他界した夫の遺灰を忍ばせたペンダントが揺れる。生前はいつも家にいて鬱陶しかったが、いざ一人になると何かと不自由なことが多い。夫の有り難さが解り、愛おしいさから今では何処でも一緒という。「お父さんありがとう。これからも残りの人生を一緒に楽しみましょうね」と呟いた。