マリー・アントワネットのダイヤモンド・イヤリング
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現存する宝飾品で最も有名なのは、1774年、王位についた夫のルイ16世から贈られた、宮廷お抱えの宝石細工師ボーメールとバッセンジらの手によるペアシェイプのドロップイヤリングだ。片方は20.34ct、もう一方は14,25ctと大ぶりで華美なダイヤモンドは彼女のお気に入りとされたが、身長が154cm(推定)と小柄な彼女には大きすぎたのではと思う。それから約20年後、まるでベルサイユという華麗な舞台で人形劇の主役を演じてきたようなマリー・アントワネットは、ギロチンの露と消え悲劇のヒロインになる。
彼女の没後60年、このイヤリングはナポレオン3世から皇后ウジェニーへ贈られ、その後ロシアの公爵夫人に渡り、1928年ピエール・カルティエが購入してマージョリー・メリウエザー・ポスト夫人に売却した。そして1964年、彼女の娘によってアメリカワシントンDCのスミソニアン博物館に寄贈される。
ちなみに、歴史的にも有名な宝石を数多く所有し、スミソニアンに相次ぎ寄贈したポスト夫人は、フロリダ州パームビーチにある現大統領のD・トランプ氏の所有する別荘「マー・ア・ラゴ」(アメリカ合衆国国定歴史建造物)を建設した人物でもある。