Jewelry sommeliere

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津延美衣(つのべみえ)NY州立大学FIT卒業。米国宝石学会鑑定有資格者(GIA-GG,AJP) 運命学・自然医学・アート・アロマテラピー・食文化などの知識を元に感動的な人生を描くプランナー・エッセイスト・キュレーター兼ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere) 美時間代表。

2016年1月17日日曜日

週刊NY生活No.566 1/1/2016「人生の放課後12」

                                  シニア層の究極の棲家

  1970年に入り、日本の65歳以上の人口比率が7%を超え「高齢化社会」の道を加速し始めた頃(現在は25%を越えた超高齢化社会)、旧国鉄中央線の車両に優先席を設けた。その愛称「シルバーシート」の語源は、高齢者の銀色の頭髪から来たと思いきや優先席にたまたま使用された銀色の布だった。そこから、忌避されてきた高齢者の呼称「年寄り」「老人」に代わり、「シルバー」が、ある学者の発案より、少し粋な「熟年」が誕生した。
  そうした忌避感が残る「老人ホーム」には一般的に、年齢を重ねるに従い心身に問題が生じて日常生活に困難をきたすようになった親の面倒を見られない子供らが、やむなく親を入所させるケースが多いと見聞きする。数十年住み慣れた棲家から突然、全く知らない環境に移されるのだからボケも一気に進み、体調が悪化するのも当然だ。


 「まだ頭がしっかりしているうちに自ら入居したくなるような施設があれば、人生の放課後も楽しめるのに」と思っていた矢先、田園都市線にある高級老人ホームの見学に誘われ、物見遊山で行ってきた。豪華なシャンデリアが吊るされた玄関が住人を迎え、病院・レストラン(軽い正装が基準)・バーカウンター・図書室・娯楽室・広場・庭(散歩や菜園も楽しめる)などを併設する高級集合住宅だ。一般居室は1LDKと2LDKの2タイプ (56㎡~100㎡)があり、そこから通勤している方もいる。(因みに現在は満室)夫婦で入居して片方の介護状態が重くなったときの介護居室もあり、併用でサポートしてくれるという。館内は廊下に掛けられた有名な絵画、陶器、アップライトピアノ、蔵書など入居者が寄付した逸品が七光している。面白いことに男性陣はT大とK大出身の派閥があり何かと競っていて、平和ボケとは無縁らしい(笑)。

2015年12月8日火曜日

週間NY生活No.562 11/28/2015「人生の放課後11」

                       シニア層の終の棲家の選択

   最近日本では横浜の欠陥マンション偽装事件をきっかけに、全国で同じような症例が次々に露見して大きな波紋を呼んでいる。建設は有名大手不動産と施工業社によるもので、建物を支える杭が強固な支持層まで届かず、建物の一部が傾いているといった手抜き工事が発覚したからだ。家は人生最大の買物と言われ、数十年のローンを抱えている住人にとってはたまったものではない。そもそもマンションの欠陥問題は露見しにくい。それは住民のなかに、将来転売して介護サービスなどが受けられる終の棲家に移ることを検討している人たちがいるためで、資産価値が損なわれるような情報が表に出にくいからだ。

  さて、加齢とともにリスクが高まる脳疾患や心臓疾患などは日常生活に支障をきたすだけでなく、命取りになることもある。そうした不安を取り除いてくれる介護付きの老人ホームもあるが、近年はそれよりも敷居が低い、国の「高齢者住まい法」の改正を受けて、2011年10月以降に誕生した「サービス付き高齢者向け住宅施設」賃貸借方式が話題を呼んでいる。2020年までに整備を急ピッチで進め60万戸を建設する予定だ。居室は台所、水洗便所、収納設備、洗面・浴室と一般的住居に準じており、最低価格帯は25平方メートル以上(食堂やリビングなど共同スペースがある場合は18平方メートル以上)からで、贅沢を言わなければ生活に必要な身の回り品や大切な写真や思い出の品などを持ち込める。提供されるサービスは安否確認と生活相談。食事など日常生活全般はオプションで選べる。入所基準は60歳以上が(要支援者は同居者も)基本。やはり、終棲家の沙汰まで金次第ということか「低価格帯の物件は人気があるので早めに申し込んで下さい」と。

2015年12月2日水曜日

週間NY生活No.558 10/24/2015「人生の放課後10」

                        シニア層の快適住宅事情

   今や世界一の長寿大国に成長した日本。65歳以上の高齢者人口は現在約4割に達し、その約半数が高齢単身・夫婦世帯と言われている。こうした状況から、不動産でも家族向けマンションの売れ行きが低迷するなか、シニア層向けの分譲マンションが絶頂期を迎えている。
  1960年代後半の高度成長期につれて、商業施設を造らない英国式の緑に囲まれた静かな環境の街づくりが鉄道の延伸と共に脚光を浴びた。あれから数十年、当時戸建てに憧れて住み始めた人々は年を重ね、買い物や駅に行くまでの距離が遠く感じるようになり、途上の坂道は彼らの行く手を阻む。そのような諸行無常のなか、渋谷を拠点とする大手電鉄会社が、彼らの不安で停滞しているどんよりした暗雲を一掃するだけではなく、新鮮な風を送り込むようなアイデアを打ち出した。つまり、街が住民の年齢と共に年を取るのではなく、様々な世代が循環しながら成長できる安心で快適な「世代循環型街づくり」が計画されたのだ。

  その一つとして、駅前にシニア層向け(段差のないバリアフリーの2LDK中心)のマンションを建設した。入居中の完熟年夫婦がインタビューに答えて、子供が独立して以来、家族同然に飼っていたという犬の写真を見せながら「主人とこの子の3人でこれからの人生を謳歌したいわ」と微笑む。駅まで雨にも濡れず足を運べるだけではなく、その途中にはクリニックやデイサービス、商店などがある。またインターネットによる宅配をはじめとする40種類以上の高齢者をサポートするサービスも受けられる。そして彼らが手放した空き家はリノベーションして、子育て世代に引き渡すという。その結果、駅周辺は年寄りからベビーカーを押す若いファミリー世代で活気に溢れ出した。

2015年11月19日木曜日

週間NY生活No.554 9/26/2015「人生の放課後9」

                    シニア層お一人さまの住宅事情

   一昔前、離れて暮らす親を心配する子供のために、有名電機メーカーが興味深い電気ポットを開発した。急須にお湯を注ぐとその反応が子供に届き、親の安否がわかるという仕掛けだ。ほのぼのとするテレビCMだったが、生涯独身、伴侶や子供と生き別れ死に別れによるお一人さまはそうはいかない。内閣府によると、平成27年度の65歳以上の単独世帯は推計で約600万世帯。そのうち持ち家率は約65%。高齢期に向かい身体機能が低下する上で必要になる家のリフォーム、一人になりがらんとした家、年金だけでは足りない固定資産税を含めた生活費など問題は山積し、今後何処でどう暮らすかの選択を迫られる。安心なのは老人ホームや高齢者用住宅に入居することだが、懐などの諸事情から入居できない人たちも多い。礼金や更新料もなく家賃が安い高齢者向けの公営住宅もあるが、抽選制で倍率は高い。いずれにしても入居する上で必要なのが保証人。貸主は、家賃の滞納と孤独死を懸念するからだ。そのハードルを越えられないお一人さまは、やむなく本来は生活保護者用の一時的な宿泊施設である「ドヤ (簡易宿泊所)」で、劣悪な居住環境に耐えながら長期滞在を余儀なくされる。今年5月そうした「ドヤ」で火災があり、犠牲者10人のうち大半が高齢者だった。
  一方、東京近郊の大学が移転して空き家になった学生寮を買い取り、月額数万円の家賃で彼らに開放する救世主も出てきた。貸主曰く、「高齢者は、夜逃げすることもないし、他界した人の後の部屋でも気にしないよ」と。その一人に老人ホームに入るのが嫌で入居したという未亡人がいた。小さな部屋の中を占領する大きな仏壇が居心地悪そうに見えたのは私だけであろうか?

  

2015年11月9日月曜日

週間NY生活No550 8/22/2015「人生の放課後8」

                         シニア層は片付けが苦手

  現代社会の真骨頂はほとんどの家庭でモノが溢れ返り、それらが家の中を占領していることだ。加齢と共に片付けが億劫で先延ばしになり、何処に何を置いたかも忘れ、再度同じモノを購入してはモノが増える。贈答品の箱山だけでなく、商品やお弁当など購入時の紙袋から割り箸まで取って置く始末。モノにつまずき転んで骨折したり、上の棚からモノが落ちてきて怪我をしたりといった事態になっても、どこをどうやって片付けたら良いのやらわからない。そんな悩みを抱えたシニア層が急増しており、部屋の片付けを指南するプロや書籍も増え、テレビでは特集を組むようになった。
  まず片付けの基本は数年間使用しなかったモノを処分すること。だがそれが儘ならない。一番の理由は「もったいない」からで、「いつか使うだろう、着るだろう、読むだろう」という先送りの考えだ。そもそも「もったいない」は和製漢語「勿体」を「無し」で否定した言葉であり、「妥当でない」「不届きだ」という意味で用いらた。転じて、「自分には不相応である」「ありがたい」「粗末に扱われて惜しい」などに広がった。環境保護活動家でノーベル賞受賞者のワンガリ・マータイが約10年前、環境問題を考える際の重要な概念として「もったいない」という言葉を使用し、世界共通の言葉となったことは知られている。
  テレビを観ていたら、片付けの達人が緑寿と古希を迎えた夫婦を訪ねて実際に部屋の整理整頓を手伝っていた。時間の経過と共に部屋はまるで集中ダイエットをしたかのようにスッキリとした。埃を払われた主人の両親の写真も棚の上で満足そうだ。長男ではないので仏壇を持たないが、「それに代わるコンパクトな祭壇があったらなあ・・」とつぶやいている気がした。

2015年9月8日火曜日

週間NY生活No.546 7/25/2015 「人生の放課後7」

                         シニア層のペット事情

  平成26年度の全国犬猫飼育実態調査によると、飼育率でいうと猫は約996万匹、犬は約1035万匹で、おおよそ日本の約16%の人が飼っている計算になる。昨今、子ども(15歳未満)のいる家庭よりもペットを飼育する家庭のほうが多いのだ。これは飼育環境が良くなったことや、少子高齢化により、犬や猫がペットから生活に喜びを与えてくれるパートナー的存在に変化してきたからである。飼育状況を年代別でみると50~60歳代が最も多く、ペットを飼う効用を聞いてみたところ、「生活に潤いや安らぎを実感できるようになった」「孤独感を感じなくなった」「情緒が安定するようになった」「夫婦の会話が多くなった」など、健康面や精神面そして人と人をつなぐコミュニケーションのきっかけとして重要な存在であることも明らかになった。いわゆる犬猫といえども立派な家族の一員なのだ。それを物語る代表的なケースは、ペットの犬に巨額の遺産を相続させたというニューヨークの大富豪夫人の話だ。

  最近、日本でもペットのための遺言書を作成するシニア層が出てきた。実際には直接ペットに遺言書を残すことは不可能なので、信頼できる人間にペットの為の世話や財産管理を任せることによって、ペット自体の所有権を相続して将来を見てもらうのだ。一方、ペットと一緒に入れる墓も増えてきた。犬の平均寿命は13~17年、猫は15~20年といわれるのでおのずと先に死んでいく。そこで、ミニ骨壷に遺骨を保管し将来自分の没後一緒に葬ってもらうという寸法だ。そういえば、かつてわたしがニューヨークに住んでいた頃、隣人は犬や猫を漏れなく飼っていた。その一人が放った言葉が印象的だった。「愛するこの子は神様からの贈り物なの。"DOG" を逆から読むと"GOD"よ!」。

週間NY生活No.542 6/27 2015「人生の放課後6」

                           支援活動を待つ「お一人さま」

  日本で約600万人を数える高齢者の「お一人さま」が人生の放課後を謳歌できるのは、ある程度健康を保っているからだ。内閣府が平成24年に行った全国55歳以上の男女高齢者の健康に関する意識調査によれば、現在の健康状態が普通ないし良好、また生きがい(喜びや楽しみ)を感じるといった人々が8割強にも及んだ。その割には病院に1ヶ月に1回以上通っている人が世界的に見ても多いのは高齢者への支援活動が活発化しているからだといえる。またその人達に認知症が多いのも事実だ。
   厚生労働省の調査によると、2012年に約470万人に達した認知症の高齢者が10年後には1.5倍に増える見通しとなり、そこで各界の有識者、地域の暮らしを支える企業・団体や保険・医療・福祉団体などが「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」を発足させた。それに応じて日本全国に約53000店舗(2015年)を占めるうちの大手コンビニも、高齢者を支援するサービスを開始した。注目すべきは地域の自治体と提携した見守り活動を兼ねた宅配だ。出来合いのお弁当やお惣菜を届けるだけではなく、「お身体に変わったことは無いですか?」などと安否を確認したり、「今度おでんを持ってきて欲しい」「郵便物をポストに入れて欲しい」などの要望も受け入れる。最近話題になっている「ドローン」による宅配サービスの提案も出ているが、マンツーマンによるサービスには敵わない。ある高齢者によると、1人暮らしにとって会話をするのは亡くなった妻の写真に向って手を合わせる時だけ。だから宅配の人と1日にほんの数分でも話すことが楽しいという。また「お一人さま」が亡くなっているのを発見することもある。彼らによる通報が半年で70件以上にも及ぶというから驚く。