常陸国が誇るー進化する伝統工芸と匠の技ー展 by crafteriart gallery
古来から日本人は、生活必需品を地域で取れる良質な素材を選んで一つ一つ心を込めて手作りし手入れをしながら長く使う風習がありました。昭和49年、経済産業大臣による「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」が制定されました。1、日常生活に使われる伝統的な原材料・技術・技法による殆どが手作業で製造されたもの。2、一定の地域に生産者が集まっていること。それに準ずるものは茨城県に 結城紬、笠間焼、真壁石燈蘢があります。なお、茨城県では知事による「茨城県郷土工芸品指定要領」(昭和62)があり、内容はほぼ同様で「5年以上県内において製造されいて将来に渡り継続が見込まれるもの」が加わります。
本展では、日常生活のなかで育まれてきた日本人の知恵と熟練を要する伝統の技を継承しながら、他県ではあまりない独自のスタイルを追求できることにより進化を遂げてきた、常陸国(茨城県)の誇る匠の技をご紹介致します。特に県内の方々に「灯台下暗し」となっていると思われるそれらの素晴らしさを再認識するとともに周知して頂き、茨城県伝統工芸のさらなる発展につながると幸いです。
1、いばらき組子 安達克敏/将伍
昔から障子や欄間などの建具の装飾として用いられてきた組子細工の起源は飛鳥時代といわれ、日本最古のものは法隆寺の金堂にあります。組子は長い年月をかけて磨き抜かれてきた木工技術で、釘を使わずに細く引き割った木に溝・穴・ホゾ加工を施しカンナやノコギリ、ノミで調節しながら1本1本組み付けていく、わずかな寸法の狂いも許さない熟練した職人によって創り出すことができます。安達建具の三代目安達氏は長男とともに建具製作、デサイン組子製作も手がけ日本初となる立体的な組子(行灯)を発表しました。
2、笠間焼 大貫博之
笠間焼は江戸時代中期に始まり、恵まれた環境下で関東最古の窯を守りながら今日まで生活雑器を中心に生産しています。一方で、笠間の地は伝統や格式に縛られない日本でも有数の産地で、全国から陶芸家が移り住み各々の世界観を自由に表現できます。そのなかで、大貫氏はグラフィックデザイナー出身の経験を生かし、身近にある野の草花をモチーフにした線象嵌と色絵の技法を用いた「彩時器」、書道の筆の運びをイメージした「モノトーンの器」、最近では模様をつけた「白彩器」などを制作しております。
3、桂雛 小佐畑孝雄
「桂雛(かつらびな)」とは、かつては徳川家の城下町として、建築職人や工芸職人などが住み着いた旧桂村(現城里町)より名前が付けられた雛人形のことです。この地は、明治中期頃から埼玉県・静岡県と並び代表的な雛人形の産地でしたが衰退が進むなか「桂雛」は、伝統ある雛人形を復活させると同時に昨今のニーズに応える雛人形作りをしております。通常は分業の雛人形の体部を一貫して手作りで製作するその製造法と技法が高く評価され、平成3年には「茨城県郷土工芸品」に指定されています。
4、大子漆(八溝塗) 辻徹
大子漆は圧倒的に透明度が高く上質で美しい艶が最大の特徴です。輪島塗や春慶塗など高級漆器の仕上げ用に使われたり、国宝建築の修復にも採用されています。辻氏は太子町に残る最高級の漆と漆掻きの文化を絶やすまいと一念発起し自ら樹液の採集を始めて「太子漆 八溝塗」を立ち上げました。現在は工房のスタッフと共に、漆の栽培から木地の製作・漆塗りまでの全工程を手がけています。その透明感や艶、使えば使うほどに味わい深くなる“本物”の良さを実感してもらいたく手頃な価格で普段使いの漆器を提供しています。
5、西ノ内町和紙 菊池大輔
江戸時代から伝わる西ノ内和紙は、古くから和紙の原料である最高級の那須楮(こうぞ)を使用し、奥久慈の清らかな水で漉き出される国・県の無形文化財です。丈夫で水に強く防虫や除湿の機能性が高いことから四季を通じて最適な環境を保つ庶民生活の日用品として重宝され、徳川光圀が編纂した「大日本史」や商家の帳簿「大福帳」などに用いられます。その伝統を継承する「紙のさと」の四代目、菊池氏は那須楮の栽培から紙漉まで一貫して担う傍ら、強靭な紙の特性を生かした小物、インテリア作品なども手掛けてます。
6、本場結城紬 花田啓子/千裕
奈良時代、茨城県と栃木県にまたがる鬼怒川流域にて作られてきた結城紬は、手で紡ぎだした太糸の絹織物として朝廷に上納されます。鎌倉時代、領主であった結城氏の名から結城紬と呼称され全国的な知名度が高まり、のちに染法や、職人の高い技術を要する「経緯絣(たてよこかすり)」の技術が生まれ品質は向上。戦後、細かい糸を用いた絣は精緻化され軽量化が進みます。花田氏は、心地良く経年変化による風合いが魅力な絹織物の最高峰である結城紬を現代風にアレンジし、オリジナル作品を誕生させています。
7、水府(すずも)提灯 鈴木茂兵衛商店/ミック・イタヤ
水府提灯は日本の三大産地の一つです。提灯とは軽くて持ち運びが楽で小さく畳める照明器具のことです。江戸時代、水戸藩で土地の生産性の評価にあたる米の収穫量が大幅に下回り、窮乏化した下級武士らは自らの生活を支えるために提灯作りを始めました。その伝統的な技術を江戸時代から現代に伝える老舗が鈴木茂兵衛商店です。七代目鈴木降太郎氏は、新たな視点から照明器具とし現代の暮らしに対応できる提灯づくりに励み、ミック・イタヤ氏とのコラボにより「すずも提灯」を誕生させました。
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