ティファニーの「歴史と伝説的なジュエリー」3
現在ではエンゲージメントリングのスタンダートスタイルになっている、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドをできる限り小さく仕上げられた6本爪で石留めする方法は、1886年にティファニーによって考案され「ティファニーセッティング」と名付けられた。それにより、あらゆる方向から光が入り、輝きと美しさが一段と増すと同時に、見る人の視線をセンターのダイヤモンドに集中させ際立たせることを可能にした。
1902年、チャールズ・ルイス・ティファニーの息子であるルイス・コンフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany)は、社内にアートジュエリー専門部門を創設しデザインディレクターに就任した。アートに造詣のあった彼はジュエリーだけではなく、自然や異文化からデザインを取り入れ、そして斬新なジュエリーとエナメル工芸品を発表していく。
1926年、アメリカ合衆国の政府はティファニーが導入しているプラチナの純度基準を、国の公式な基準値として認可するほど、米国内でティファニーの影響力は高まっていく。1940年には、現在のニューヨーク5番街57丁目に移転し、エントランス上部には時計を担ぐ巨神アトラスの像が掲げられた。そして1972年、ティファニーは日本に進出を果たす。
ところで、ティファニーには人気を支えてきた伝説的なデザイナーたちがいる。その一人、20世紀を代表するジャン・シュランバージェ(Jean Schlumberger)は1907年フランスアルザスの由緒あるテキスタイルメーカーの一家に生まれ、のちにニューヨークに移住。その後1956年ティファニーにパートナーとして正式に加わった。ウイットと好奇心に富んだ魅力的な作品で知られ、貴重なジェムストーンの独特の色彩を生かしながら自然の神秘を美しく力強いデザインに込めて創作していく。1995年には、「ティファニー イエロー ダイヤモンド」のデザインに採用された彼の代表作となる「バード オン ア ロック」が完成した。プラチナとゴールドの枠にホワイトとイエローのダイヤモンドが配されたボディとルビーの目を持つ美しい鳥をダイヤモンドにマウントしたブローチだ。実際にニューヨーク本店にてその作品を鑑賞したが、まるで異次元から幸せを運んで来た鳥が煌めきを放っているように感じた。