Jewelry sommeliere

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NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2016年12月30日金曜日

週刊NY生活No.610.12/3/16'「12月の誕生石トルコ石」

               12月の誕生石ターコイズ「トルコ石」

  人生の門出や旅人には最高の贈り物とされるトルコ石は、紀元前5千年頃にメソポタミア(現イラク)で発見された最古の宝石だ。自然崇拝のもと、古代エジプト、インカ帝国、ペルシャ、チベットやアメリカ・インディアなどで、肉体と魂を危険や災いから守る天の神の宿った聖なる石とされた。トルコ石('Turquoise 'フランス語)の名称になったのは13世紀以降、トルコ経由でフランスのバイヤーに渡ってからだ。それまでは美しい石を意味する'カレース'と呼ばれていた。その色合いは、銅の成分により空色を生じ、鉄分が混じると黄色が加わって緑色を帯びる。高く評価されるのはペルシャ産の天然(無処理)スカイブルーのもの。トルコ石は体に付けていると変色や欠けにより身に迫る危険を知らせるというのは、本来多孔質でもろく変色(汗や体の油、香水による)や退色(直射日光による)を招きやすいからだ。それらを防ぐために樹脂含浸や表面をコーティングする必要がある。


  作家・乾石智子の小説『双頭の蜥蜴』。タイトルの蜥蜴は、母に疎まれ親友まで失った主人公の少女の中に住み付いていた。それは命あるものすべてに共通する、憎しみやマイナス志向が心の中に生み出す化け物のこと。これらが異次元の世界を中心にやがて巨大勢力となり、全世界を支配するという。それを防ぐ役目を担う者が持つ'トルコ石のペンダント'に彼女は出会い自ずと身に付ける。そして異次元の世界に渡りこの石に守られながらその根源を断つ。「ターコイズ・エクスペリエンス」という意欲が湧いたのだ。さらにこの石は、第五チャクラにあたる喉の中枢開発に成果があり、相手の心の奥深く届く'パワーある言葉使い'を授かるのでビジネスにも最適だ。ちなみにトルコ石は人から貰うと効力があり、それに心が込められているとなお良い。

2016年11月7日月曜日

週刊NY生活No.606.11/5/16'「11月の誕生石トパーズ」

                   11月の誕生石トパーズ「黄玉」
  トパーズの和名は「黄玉」だが、赤、青(鮮明な色は殆どが放射線照射処理による)、黄色、オレンジなど様々な色合いがある。太陽神の象徴とされ、古代エジプト・ローマ時代から護符として愛用された。その語源は「トパゾス」' topazos '(ギリシャ語で探求の意)という紅海に浮かぶ島の名前で、別名はSt.ジョンズ島(ペリドットの産地)。常に霧に包まれ辿り着くのが困難な島で、難破した海賊がこの原石を偶然発見して欧州に持ち込んだという。
  19世紀の後半、紫水晶を加熱して出来上がった黄色のシトリン(水晶)がゴールデン・トパーズとして市場に出回り、本物と区別するためブラジルの宝石業界が当時の皇帝ペトロ2世のインペリアルを冠してインペリアル・トパーズと呼んだ。なかでも極上のシェリー酒のような赤みの強いオレンジは希少価値が高い。
  この石を身につける者は「探求」力により、人生において本当に必要なものが得られるという。英国の作家ニール・ゲーマンの『スターダスト』の主人公の青年は、思いを寄せる女の気紛れから流れ星を持って帰る羽目になり妖精の世界に足を踏入れ、少女(星の化身)を捕まえて帰途につく。少女(星)は、この国の王が亡くなる寸前に天高く投げた(次の王が身に付ける)トパーズのネックレスにぶつかり落下した。同時にこれを真の持主に届ける役目も担っていた。つれなかった青年と少女は、道中ネックレスを追う国王の息子たちや少女(星)の心臓を狙う老魔女から苛まれ逃れるため共に手を取る。やがてお互いが無二の存在になっているのに気付き、青年がこの石の持主と判る。

  トパーズは第2の脳とも言われる自律神経の中枢、みぞおち(体内の太陽が宿る第3チャクラ)に作用し、その電気的性質が身体に電圧を生み出し、神経性の疲労や心の傷を癒すという。

2016年10月3日月曜日

週刊NY生活No.602.10/1/16'「10月の誕生石オパール」

                 10月の誕生石オパール「貴蛋白石」

  宝石品質のオパールは、規則正しく積層した透明で微細なシリカ球(地球の表層の60%占める元素)とその隙間を埋める水で形成される。そこに光が通ると、あらゆる宝石の色合が奏でる万華鏡のような遊色効果(色彩が変化する現象)が見られ、歴史上多くの文化を通じて全ての宝石の中で最もミステリアスで幸運なものとみなされていた。最初に登場するのは古代ローマ時代で、その語源は貴石を意味する古いサンスクリット語の'upalus'から転じたローマ語のオパロス'opalus'。中世に入ってもヨーロッパの王族貴顕に愛されたが、やがて「オパールは10月の誕生石で、他の月に生まれた人には不運」だという迷信が広まった。それは、英国の作家S・W・スコットの小説『ガイエルスタインのアン』(ヒロインと髪飾りのオパールが魔法にかけられ、彼女の感情により髪飾りの輝きが変化する。オパールに聖油をかけて魔法を解くと、彼女は一握りの灰になった)に由来すると言われるが、真実は宝石業者泣かせにある。水分を含むこの石はデリケートで傷つきやすく 、熱や乾燥により割れたり遊色が弱まるからだ。後に英国のビクトリア女王は、自国領土の豪州が有名な(ブラック)オパールの原産地だったので、この石を王室の婚礼に使用するなど商業ベースで広めてゆき、再び人気を取り戻した。

  オパールの遊色は光のスペクトルと同様、シリカ球のサイズが大きくなるにつれ、紫→青~緑~黄→赤に変化するが、特に赤色が出るのは難しく希少性は高い。様々な色彩を持つこの石は全てのチャクラに作用し、私たちの日常生活を宇宙意識へと高めてくれるという。但しオパールは身に付ける前に、己の持つ想念を増幅するので浄化する必要がある。ちなみに情熱や集中力を高めるファイヤー・オパールは起業家に最適とのこと。

2016年9月12日月曜日

週刊NY生活No.598.9/3/16 '「9月の誕生石サファイヤ」

                    9月の誕生石サファイヤ「蒼玉」

   サファイヤは古代から原産地インド周辺の仏教徒の間で、心に平和をもたらし病気や災難を防ぐ石として尊重された。ヨーロッパでは、インドとの交易が盛んになる以前、サファイヤは青色(ギリシャ語の'sappheiros'を語源)石の総称で、旧約聖書にも登場し珍重されたが、その大半はラピスラズリ(瑠璃)だった。中世の頃から司教は、邪念や色欲を消して神の恩恵を受けると言われたサファイヤの指輪を嵌め、信者に触れて人々の悩みや苦しみを救ってきた。特にこの石を愛でたのが英国王室で、最古は聖エドワード聴罪司祭の宝冠の十字架に嵌められ、近年はチャールズ皇太子がレディ・ダイアナに12ctの婚約指輪を贈った。
  コランダム族(鉱物)のサファイヤは一般的に青色を指し、中でも矢車草の花の色をしたインド・カシミール地方の石は最高品質。また青色に限らず、ファンシーサファイヤと呼ばれる、赤色(ルビー)を除く様々な色相がある。
   サファイヤは、最も深い藍色光の振動数でエネルギーを集め、直感力が絶大になった持ち主を世界の征服者にするという伝説から「皇帝の石」とも呼ばれた。ナポレオンはこの石(護符)を持ち、次々とヨーロッパの領土を広げ帝国を築き上げる。一方、愛妻ジョゼフィーヌの浮気に悩みこの石を彼女に譲ってしまった。途端に彼は浮気に走り、2番目の妃を迎え待望の皇太子も得たが、これを頂点にロシア侵攻という破壊への道を辿る。

  作家の藤本ひとみ『皇女ジョゼフィーヌの恋』によれば、貧困貴族の出で無教養なジョゼフィーヌが地位や財産目当てに逢瀬を重ねたのは処世術であった。彼女は「初婚は不幸で、2度目(ナポレオン)も離婚されるが、王妃以上の身分と贅沢な暮らしが出来る」という占いを信じ、愛していなかったナポレオンに人生を賭けた強かな女性である。

2016年8月11日木曜日

週刊NY生活No.594.8/6/16'「8月の誕生石ペリドット」

                8月の誕生石ペリドット「カンラン石」

   ペリドットは、地球上で最多の鉱物オリビン(カンラン石)の中でも透明でオリーブ色(純粋な緑~黄色がかった緑)をした宝石だ。語源は宝石を意味するアラビア語の「faridat」に由来する。良質なこの石は、3500年以上前から紅海に浮かぶセントジョンズ島で産出され、古代エジプト王朝では繁栄のシンボル・災いを避ける護符・暗黒の波動を打ち砕く「太陽の宝石」として愛された。クレオパトラの有名なエメラルドコレクションの多くはこの石だといわれる。一方「太陽から飛んできた石」という伝承通り、宇宙より飛来した隕石中に含まれる唯一の宝石だ。12世紀に入ると十字軍がヨーロッパに広め、王冠に嵌められ、中世の教会などの装飾に使われた。この石が「夜会のエメラルド」の異名を持つのは、複屈折率の高さから光の少ない夜でも輝いて見えるからだ。また「リリーパッド」と呼ばれる、反射するデイスク状の内包物はとても神秘的。
  ペリドットは昔から身体を癒す鎮痛剤、浄化剤、バランス剤として使われた。また冠や頑飾りにすると、高位3つのチャクラ(特に頂上)を刺激するという。

   作家M・ルイーズ・ホールの「裏切りの甘い香り」は、次期女王エリザベス1世の命を狙う危険な陰謀の首謀者探しから始まる。疑いをかけられた主人公の女性「セラフィーナ」と、その真相を探ろうと彼女に近づき求婚までしたエリザベスの側近「ヘイウッド伯爵」。お互いに出会った途端惹かれ合い、建前の駆け引きがいつの間にか本音に変化して行く。物語の終盤、彼女は思いも寄らなかった親類(真の首謀者)から命を狙われるが、危機一髪命を取り留める。彼から贈られたペリドットのネックレスを身に付けていたからだ。

2016年7月1日金曜日

週刊NY生活No.590.7/2/16'「7月の誕生石ルビー」

                       7月の誕生石ルビー「紅玉」

   古来から人間は 太陽・炎・血など生命力を連想させる赤い色にいち早く反応してきた。従って古代サンスクリット語の'ratnaraj'(貴石の王者)と呼ばれたルビーは、歴史的にも重要な色石である。名前の由来は'rubber'(赤色の石)というラテン語で、当時の赤い宝石の総称(赤いガーネットやスピネルなども)。英国王室の王冠に飾られた巨大な宝石 '黒皇太子のルビー' がレッドスピネルだったことは有名だ。東南アジア原産のルビーはオリエントだけではなくヨーロッパに渡り、護符・健康・長寿・富・知恵・恋愛成就をもたらす神に捧げられ、また身体に付けられてきた。
   ルビーがサファイヤと同じコランダム(鉱物)族と判明したのは、近世の宝石学の進歩による。そしてコランダムの中で、1~2%の'クロム'を含むことにより濃く赤い色調に変化したものだけをルビーと呼ぶ。
  ルビーは血液・心臓と共鳴して、体内の血行に大きく関係する諸中枢を浄化するといわれ、元気の源である第1チャクラと、愛や癒しの第4チャクラを活性化する。またダイヤモンドと同様、とくに質の良い大きめなルビーは、身に付ける者のエネルギー(善しも悪しも)を増幅させる。万が一、博愛精神に欠け強欲が過ぎると、この石から投影される'永遠の炎'をもって浄化されるという。

   作家フィリッパ・グレゴリーの小説『ブーリン家の姉妹』の中で、英国王ヘンリー8世の最初の皇后キャサリンの侍女だった妹のメアリーは愛に生きた。かたや富や権力全て欲した姉のアンは、王ヘンリーから大きくて立派だと思われたルビーを贈られるほどの間柄になる。やがて皇后の座を奪い、冷酷非道に走り出した矢先、処刑場が彼女を待っている。

2016年6月30日木曜日

週刊NY生活No.586.6/4/16'「6月の誕生石パール」

                        6月の誕生石パール「真珠」

    自然の中で育まれる真珠は、真珠層が醸し出す独特の反射光の強さと鮮明さによる眩いばかりの光沢に、太古の昔から人びとが最初に酔いしれた貴重な宝石だ。真珠質(粘膜)を分泌して真珠層をつくるが、真珠は生きものでその過程で苦痛が伴うという(諸説あり)。皮肉にもその繰り返しにより美しさを増すのだ。またアコヤ貝は海水真珠のなかで『真珠の王様』と呼ばれていた。主な生息地はバナナ・ベルト地帯で、古代ヨーロッパ・オリエントでは王族や貴族など特権階級の間でもてはやされ、日本では『魏志倭人伝』によると、卑弥呼の後を継いだ「壱与」が5千個の真珠(白珠5千孔)を中国の王朝に献上した。通常、丸くて美しい5千個の真珠を集めるには2千5百万個~5千万個のアコヤ貝が必要だったことから希少性がわかる。その後「御木本幸吉」など日本人らによる養殖技術が確立すると、一般の人にも安定した質の良い養殖真珠が手に入るようになった。

   宮尾登美子の著書『クレオパトラ』のなかで、最後の女王として熾烈な権力闘争の渦中に生きたクレオパトラは、内憂外患を一身に背負い込むと同時に、独りの女性として四苦八苦に見舞われるが(愛別離苦は特に彼女を深く傷つけた)、そのたびに彼女の魅力は増していった。アントニー(後の夫)との一国をかけた駆け引きで、耳につけていたプトレマイオス家に伝わる世界一の真珠を外し、それを酢に入れて飲み干すところは圧巻だ。真珠は身に付けている人のネガティヴな面を吸収し、美と健康にも良いとされる反面、自ら起こしたマイナスの力が本人にはね返るという。真珠好きの彼女は今わの際、因果応報の法則通りの結末を迎える。ちなみに真珠は直接肌に付けると良いとされる。

2016年5月7日土曜日

週刊NY生活No.582.5/7/16'「5月の誕生石エメラルド」


                           エメラルド(翠玉)

   エメラルドは紀元前4千年頃、バビロニアでヴィーナスに捧げる宝石として取り引きされた。富や権力の象徴であり、解毒・免疫系賦活・眼病全般に効くとされ、またその美しさからクレオパトラや皇帝ネロなど偉人たちを虜にした。キリストが最後の晩餐に使った聖杯(グラール)はエメラルドから彫られたという言い伝えもある。
  太古の昔から絶大な人気を誇る '宝石の女王エメラルド' の魅力は、鮮やかな透明感と、深みのある少し青みがかった緑や、暖かくより強い純粋な緑の色合いだ。その反面、他の宝石と比べると一般的には嫌われる内包物(インクルージョン)が多いのが玉に瑕だが、この石に限りある程度は「庭園を見ているよう」だからとフランス語の'ジャルダン'と呼ばれ、またコロンビア産に見られる岩塩・塩水・気泡による三層インクルージョンは「かつては海底にあった神秘的な証」などと美化する傾向がある。
  この石を身に付けると、胸(第4チャクラ)の深部に作用して全てのチャクラの中枢の働きを高め、神経を鎮めて、肉体・精神・魂全般に平和と調和をもたらす。

  英国の小説家サマセット・モームの作品『女ごころ』で、主人公のメアリーが30前にして未亡人になるとすかさず亡き父親と同士のエドガーから求婚される。この男は彼女が子供の頃から好意を寄せていて、彼女が結婚した時にエメラルドを幾つも贈った。この石は贈る者の波動が中に込められると言われ、この男の愛は富と権力の上にあった。計4人の男たちがメアリーの美貌に翻弄されるなか、彼女はエメラルドの精がとりついたように慈悲心に溢れ、自分の心に嘘をつけない正直な行動が裏目にでるが、最後には真実の愛を確信する。ちなみに身に付けるエメラルドは単独もしくはダイヤモンドとの組合せが良い。

2016年4月3日日曜日

週刊NY生活No.578.4/2/16'「4月の誕生石ダイヤモンド」

                          ダイヤモンド(金剛石)
   ダイヤモンドは数十億年前、地球の深部にて、ある高温・高圧の条件下で誕生した炭素100%の宝石だ。その後、数億年数十億年もの悠久の時を地中に眠り、マグマ内の強力な気体の膨張と噴出速度により母岩に包み込まれて上昇し、初めて地表に現れる(万が一その途中、圧力が下がった状態で長時間高温にさらされると、皮肉にも最も柔らかなグラファイト(炭)に変質してしまう)。その原子は自然界のどの物質よりも硬く結びついていることから「永遠の絆」の象徴として婚約指輪に用いられる。また、この石から放たれるエネルギーは太陽系の全惑星の光線が含まれており、この石を持つ者のエネルギー(善しも悪しも)を最大なものにする一方、そこに純粋な心が備わると保護膜となり誰も覆し得ない力を与える。さらにチャクラ高位の2中枢(松果体と下垂体)を開く助けもする。ダイヤモンドは特に指輪など一緒に合わせる石の持つ力を増幅させる作用がある。

   明治時代の作家、尾崎紅葉の小説『金色夜叉』のなかで、貫一と両思いの許婚だったお宮が、資産家の息子(富山唯継)に嫁ぐ決意を告げる熱海の海岸で貫一に足蹴りされる場面は有名だ。お宮は貫一を慕いつつ、富山が嵌めていた大きなダイヤモンドの指輪(当時の金額で300円)に本当に目が眩んだと思う。目も彩な表面の輝きにもまして、誰もがその内部の光三原色が奏でる七色のシャンデリアが揺れているような幻想的な世界に惹き込まれる。これこそがダイヤモンドの最大の魅力だが、親油性があるので直接手で触れないことが肝心だ。

2016年3月6日日曜日

週刊NY生活No.574 3/5/16'「3月の誕生石アクアマリン」

                            アクアマリン(藍玉)
   限りなく透明な水色の海を彷彿させるアクアマリン(海水を意味するラテン語)はベリル(緑柱石)族で、その結晶は先端を水平にスパッと切り落としたような六角形の柱。ちなみに同じベリル族でも緑色はエメラルドになる。宝石は種類により人口の照明下では美しさの度合いが損なわれるが、アクアマリンに限り輝きを増すことから、中世ヨーロッパでは夜会用の宝石「夜の女王」として親しまれ、月光を浴びると幻想的に煌めくことから昔から聖なる石といわれる。清らかな水面を見ながら深呼吸すると何かしら爽快な気分になるが、水と非常に関連性が強いとされるこの石は、身に付けると私たちの内面に滞ってしまった老廃物を浄化するフィルターの役目となり、気持ちのバランスを整え安定感をもたらすという。

  アクアマリンは特に中世のローマ人を虜にしたようだ。第26代ローマ教皇・軍人法王の 'ユリウス二世' (1503~1513年在位)は好戦的な教皇であった反面、芸術をこよなく愛し、ラファエロに自らの肖像画を、ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の天井画を描かせ、バチカン美術館を興隆させるなどルネサンス芸術の最盛期をもたらした。塩野七生は『神の代理人』の中で、ユリウス二世は、5万ドゥカード(当時の貨幣)をかけて作らせた黄金と宝石に輝く'三重冠'(教会と法王の尊厳を示す)を頭上に被り何度か行軍したと書いている。それら宝石の中に、一番大きく美しいものの一つである約5センチ四方のアクアマリンがはめられていたという。

2016年2月16日火曜日

週刊NY生活No.570 2/6/16'「2月の誕生石アメシスト」

                           アメシスト(紫水晶)

   2月の誕生石「アメシスト」(紫水晶)は深い霊的作用を持つと言われる。旧約聖書の中で、祭司長がイスラエルの12部族を象徴する「裁きの胸当て」に飾られた12の宝石の1つである。また、ヒーリング効果が非常に高く、キリスト教の世界では「司教の石」として知られている。
  フランスの作家アンドレ・ジットが書いた不朽の名作「狭き門」の中に、まるで物語のキーポイントを握るかのように、アメシストで作られた古くて小さな十字架が登場する。主人公のジェロームが愛する、従姉アリサは母の形見であるそれを身につけている。彼女も彼を愛するが故に完璧をめざして神への道を歩むが、進めば進むほど心とは裏腹に彼との距離は開き、終には苦悩しながら死しんでいく。
  人間や動物には生命活動や精神をコントロールするため、身体の中心線に沿ってエネルギーの中枢となる「7つのチャクラ」があると言われる。アメシストの紫色は頭頂のチャクラ(霊魂の聖域)にあたるとされ、脊椎の基部にあたる一番下のチャクラ(生命・肉体)の赤色が、青色の喉のチャクラ(創造力)まで上昇すると混じり合い、霊的な本質は悲しみに鍛えられ高貴なものになる。そして人は神の愛により覚醒して無私の奉仕をするという。高い霊性を認めていた初期のクリスチャンは、アメシストを自己犠牲、純潔、慈愛のシンボルと見なした。
   ちなみにアメシストの指輪をはめるのは、霊的である中指がお勧めだ。

2016年1月17日日曜日

週刊NY生活No.566 1/1/2016「人生の放課後12」

                                  シニア層の究極の棲家

  1970年に入り、日本の65歳以上の人口比率が7%を超え「高齢化社会」の道を加速し始めた頃(現在は25%を越えた超高齢化社会)、旧国鉄中央線の車両に優先席を設けた。その愛称「シルバーシート」の語源は、高齢者の銀色の頭髪から来たと思いきや優先席にたまたま使用された銀色の布だった。そこから、忌避されてきた高齢者の呼称「年寄り」「老人」に代わり、「シルバー」が、ある学者の発案より、少し粋な「熟年」が誕生した。
  そうした忌避感が残る「老人ホーム」には一般的に、年齢を重ねるに従い心身に問題が生じて日常生活に困難をきたすようになった親の面倒を見られない子供らが、やむなく親を入所させるケースが多いと見聞きする。数十年住み慣れた棲家から突然、全く知らない環境に移されるのだからボケも一気に進み、体調が悪化するのも当然だ。


 「まだ頭がしっかりしているうちに自ら入居したくなるような施設があれば、人生の放課後も楽しめるのに」と思っていた矢先、田園都市線にある高級老人ホームの見学に誘われ、物見遊山で行ってきた。豪華なシャンデリアが吊るされた玄関が住人を迎え、病院・レストラン(軽い正装が基準)・バーカウンター・図書室・娯楽室・広場・庭(散歩や菜園も楽しめる)などを併設する高級集合住宅だ。一般居室は1LDKと2LDKの2タイプ (56㎡~100㎡)があり、そこから通勤している方もいる。(因みに現在は満室)夫婦で入居して片方の介護状態が重くなったときの介護居室もあり、併用でサポートしてくれるという。館内は廊下に掛けられた有名な絵画、陶器、アップライトピアノ、蔵書など入居者が寄付した逸品が七光している。面白いことに男性陣はT大とK大出身の派閥があり何かと競っていて、平和ボケとは無縁らしい(笑)。