Jewelry sommeliere

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NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2015年12月8日火曜日

週間NY生活No.562 11/28/2015「人生の放課後11」

                       シニア層の終の棲家の選択

   最近日本では横浜の欠陥マンション偽装事件をきっかけに、全国で同じような症例が次々に露見して大きな波紋を呼んでいる。建設は有名大手不動産と施工業社によるもので、建物を支える杭が強固な支持層まで届かず、建物の一部が傾いているといった手抜き工事が発覚したからだ。家は人生最大の買物と言われ、数十年のローンを抱えている住人にとってはたまったものではない。そもそもマンションの欠陥問題は露見しにくい。それは住民のなかに、将来転売して介護サービスなどが受けられる終の棲家に移ることを検討している人たちがいるためで、資産価値が損なわれるような情報が表に出にくいからだ。

  さて、加齢とともにリスクが高まる脳疾患や心臓疾患などは日常生活に支障をきたすだけでなく、命取りになることもある。そうした不安を取り除いてくれる介護付きの老人ホームもあるが、近年はそれよりも敷居が低い、国の「高齢者住まい法」の改正を受けて、2011年10月以降に誕生した「サービス付き高齢者向け住宅施設」賃貸借方式が話題を呼んでいる。2020年までに整備を急ピッチで進め60万戸を建設する予定だ。居室は台所、水洗便所、収納設備、洗面・浴室と一般的住居に準じており、最低価格帯は25平方メートル以上(食堂やリビングなど共同スペースがある場合は18平方メートル以上)からで、贅沢を言わなければ生活に必要な身の回り品や大切な写真や思い出の品などを持ち込める。提供されるサービスは安否確認と生活相談。食事など日常生活全般はオプションで選べる。入所基準は60歳以上が(要支援者は同居者も)基本。やはり、終棲家の沙汰まで金次第ということか「低価格帯の物件は人気があるので早めに申し込んで下さい」と。

2015年12月2日水曜日

週間NY生活No.558 10/24/2015「人生の放課後10」

                        シニア層の快適住宅事情

   今や世界一の長寿大国に成長した日本。65歳以上の高齢者人口は現在約4割に達し、その約半数が高齢単身・夫婦世帯と言われている。こうした状況から、不動産でも家族向けマンションの売れ行きが低迷するなか、シニア層向けの分譲マンションが絶頂期を迎えている。
  1960年代後半の高度成長期につれて、商業施設を造らない英国式の緑に囲まれた静かな環境の街づくりが鉄道の延伸と共に脚光を浴びた。あれから数十年、当時戸建てに憧れて住み始めた人々は年を重ね、買い物や駅に行くまでの距離が遠く感じるようになり、途上の坂道は彼らの行く手を阻む。そのような諸行無常のなか、渋谷を拠点とする大手電鉄会社が、彼らの不安で停滞しているどんよりした暗雲を一掃するだけではなく、新鮮な風を送り込むようなアイデアを打ち出した。つまり、街が住民の年齢と共に年を取るのではなく、様々な世代が循環しながら成長できる安心で快適な「世代循環型街づくり」が計画されたのだ。

  その一つとして、駅前にシニア層向け(段差のないバリアフリーの2LDK中心)のマンションを建設した。入居中の完熟年夫婦がインタビューに答えて、子供が独立して以来、家族同然に飼っていたという犬の写真を見せながら「主人とこの子の3人でこれからの人生を謳歌したいわ」と微笑む。駅まで雨にも濡れず足を運べるだけではなく、その途中にはクリニックやデイサービス、商店などがある。またインターネットによる宅配をはじめとする40種類以上の高齢者をサポートするサービスも受けられる。そして彼らが手放した空き家はリノベーションして、子育て世代に引き渡すという。その結果、駅周辺は年寄りからベビーカーを押す若いファミリー世代で活気に溢れ出した。

2015年11月19日木曜日

週間NY生活No.554 9/26/2015「人生の放課後9」

                    シニア層お一人さまの住宅事情

   一昔前、離れて暮らす親を心配する子供のために、有名電機メーカーが興味深い電気ポットを開発した。急須にお湯を注ぐとその反応が子供に届き、親の安否がわかるという仕掛けだ。ほのぼのとするテレビCMだったが、生涯独身、伴侶や子供と生き別れ死に別れによるお一人さまはそうはいかない。内閣府によると、平成27年度の65歳以上の単独世帯は推計で約600万世帯。そのうち持ち家率は約65%。高齢期に向かい身体機能が低下する上で必要になる家のリフォーム、一人になりがらんとした家、年金だけでは足りない固定資産税を含めた生活費など問題は山積し、今後何処でどう暮らすかの選択を迫られる。安心なのは老人ホームや高齢者用住宅に入居することだが、懐などの諸事情から入居できない人たちも多い。礼金や更新料もなく家賃が安い高齢者向けの公営住宅もあるが、抽選制で倍率は高い。いずれにしても入居する上で必要なのが保証人。貸主は、家賃の滞納と孤独死を懸念するからだ。そのハードルを越えられないお一人さまは、やむなく本来は生活保護者用の一時的な宿泊施設である「ドヤ (簡易宿泊所)」で、劣悪な居住環境に耐えながら長期滞在を余儀なくされる。今年5月そうした「ドヤ」で火災があり、犠牲者10人のうち大半が高齢者だった。
  一方、東京近郊の大学が移転して空き家になった学生寮を買い取り、月額数万円の家賃で彼らに開放する救世主も出てきた。貸主曰く、「高齢者は、夜逃げすることもないし、他界した人の後の部屋でも気にしないよ」と。その一人に老人ホームに入るのが嫌で入居したという未亡人がいた。小さな部屋の中を占領する大きな仏壇が居心地悪そうに見えたのは私だけであろうか?

  

2015年11月9日月曜日

週間NY生活No550 8/22/2015「人生の放課後8」

                         シニア層は片付けが苦手

  現代社会の真骨頂はほとんどの家庭でモノが溢れ返り、それらが家の中を占領していることだ。加齢と共に片付けが億劫で先延ばしになり、何処に何を置いたかも忘れ、再度同じモノを購入してはモノが増える。贈答品の箱山だけでなく、商品やお弁当など購入時の紙袋から割り箸まで取って置く始末。モノにつまずき転んで骨折したり、上の棚からモノが落ちてきて怪我をしたりといった事態になっても、どこをどうやって片付けたら良いのやらわからない。そんな悩みを抱えたシニア層が急増しており、部屋の片付けを指南するプロや書籍も増え、テレビでは特集を組むようになった。
  まず片付けの基本は数年間使用しなかったモノを処分すること。だがそれが儘ならない。一番の理由は「もったいない」からで、「いつか使うだろう、着るだろう、読むだろう」という先送りの考えだ。そもそも「もったいない」は和製漢語「勿体」を「無し」で否定した言葉であり、「妥当でない」「不届きだ」という意味で用いらた。転じて、「自分には不相応である」「ありがたい」「粗末に扱われて惜しい」などに広がった。環境保護活動家でノーベル賞受賞者のワンガリ・マータイが約10年前、環境問題を考える際の重要な概念として「もったいない」という言葉を使用し、世界共通の言葉となったことは知られている。
  テレビを観ていたら、片付けの達人が緑寿と古希を迎えた夫婦を訪ねて実際に部屋の整理整頓を手伝っていた。時間の経過と共に部屋はまるで集中ダイエットをしたかのようにスッキリとした。埃を払われた主人の両親の写真も棚の上で満足そうだ。長男ではないので仏壇を持たないが、「それに代わるコンパクトな祭壇があったらなあ・・」とつぶやいている気がした。

2015年9月8日火曜日

週間NY生活No.546 7/25/2015 「人生の放課後7」

                         シニア層のペット事情

  平成26年度の全国犬猫飼育実態調査によると、飼育率でいうと猫は約996万匹、犬は約1035万匹で、おおよそ日本の約16%の人が飼っている計算になる。昨今、子ども(15歳未満)のいる家庭よりもペットを飼育する家庭のほうが多いのだ。これは飼育環境が良くなったことや、少子高齢化により、犬や猫がペットから生活に喜びを与えてくれるパートナー的存在に変化してきたからである。飼育状況を年代別でみると50~60歳代が最も多く、ペットを飼う効用を聞いてみたところ、「生活に潤いや安らぎを実感できるようになった」「孤独感を感じなくなった」「情緒が安定するようになった」「夫婦の会話が多くなった」など、健康面や精神面そして人と人をつなぐコミュニケーションのきっかけとして重要な存在であることも明らかになった。いわゆる犬猫といえども立派な家族の一員なのだ。それを物語る代表的なケースは、ペットの犬に巨額の遺産を相続させたというニューヨークの大富豪夫人の話だ。

  最近、日本でもペットのための遺言書を作成するシニア層が出てきた。実際には直接ペットに遺言書を残すことは不可能なので、信頼できる人間にペットの為の世話や財産管理を任せることによって、ペット自体の所有権を相続して将来を見てもらうのだ。一方、ペットと一緒に入れる墓も増えてきた。犬の平均寿命は13~17年、猫は15~20年といわれるのでおのずと先に死んでいく。そこで、ミニ骨壷に遺骨を保管し将来自分の没後一緒に葬ってもらうという寸法だ。そういえば、かつてわたしがニューヨークに住んでいた頃、隣人は犬や猫を漏れなく飼っていた。その一人が放った言葉が印象的だった。「愛するこの子は神様からの贈り物なの。"DOG" を逆から読むと"GOD"よ!」。

週間NY生活No.542 6/27 2015「人生の放課後6」

                           支援活動を待つ「お一人さま」

  日本で約600万人を数える高齢者の「お一人さま」が人生の放課後を謳歌できるのは、ある程度健康を保っているからだ。内閣府が平成24年に行った全国55歳以上の男女高齢者の健康に関する意識調査によれば、現在の健康状態が普通ないし良好、また生きがい(喜びや楽しみ)を感じるといった人々が8割強にも及んだ。その割には病院に1ヶ月に1回以上通っている人が世界的に見ても多いのは高齢者への支援活動が活発化しているからだといえる。またその人達に認知症が多いのも事実だ。
   厚生労働省の調査によると、2012年に約470万人に達した認知症の高齢者が10年後には1.5倍に増える見通しとなり、そこで各界の有識者、地域の暮らしを支える企業・団体や保険・医療・福祉団体などが「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」を発足させた。それに応じて日本全国に約53000店舗(2015年)を占めるうちの大手コンビニも、高齢者を支援するサービスを開始した。注目すべきは地域の自治体と提携した見守り活動を兼ねた宅配だ。出来合いのお弁当やお惣菜を届けるだけではなく、「お身体に変わったことは無いですか?」などと安否を確認したり、「今度おでんを持ってきて欲しい」「郵便物をポストに入れて欲しい」などの要望も受け入れる。最近話題になっている「ドローン」による宅配サービスの提案も出ているが、マンツーマンによるサービスには敵わない。ある高齢者によると、1人暮らしにとって会話をするのは亡くなった妻の写真に向って手を合わせる時だけ。だから宅配の人と1日にほんの数分でも話すことが楽しいという。また「お一人さま」が亡くなっているのを発見することもある。彼らによる通報が半年で70件以上にも及ぶというから驚く。

2015年8月1日土曜日

週間NY生活No538 5/23/2015 「人生の放課後5」

       「お一人さまに熱い視線」
                          
 日本の総人口に占める65歳以上の高齢者が「4人に1人」と増加の一途を辿るなかで「お一人さま」が全国約600万人にのぼる。地方で加速する「お一人さま」をターゲットにしたサービスやビジネスに注目し、地方の自治体ではシニアカードを発行して様々な割引特典を設けて彼らを取り込んでいる。一方、都心部でも「お一人さま」に熱い視線が向けられ、彼らが演奏したり歌える参加型のライブバー(あらゆるジャンル)が増えた。
   24時間営業のコンビニでは「お一人さま」用のお惣菜や日用品、お弁当を提供する。1日3回訪れるという年配の女性は「うちの冷蔵庫のようなもの」と得意満面に微笑む。同じく喫茶店もシニアシフトを始めた。ゆっくりと寛げるかつてのスタイルで、朝7時の開店と同時に近所のシニアで賑わう。朝刊に目を通して珈琲のアロマに包まれながらモーニングセットの厚切りトーストにかぶりつく。お昼になれば読みかけの本にしおりを挟み、銀皿に盛られたケチャップの甘い匂いが踊るナポリタンを口いっぱいに頬張る。ここで過ごす時間は貴重だという。
   シニア向けビジネスで大成功を収めているのが一人旅プラン。日本独特の出張用ビジネスホテルが会社の経費削減で空室が増えた。そこに目をつけた旅行代理店が、格安「お一人さま」パック旅行を打ち出すと反響大で老舗旅館もそれに応じた。古希を迎える宿泊客の女性の胸元で、半年前に他界した夫の遺灰を忍ばせたペンダントが揺れる。生前はいつも家にいて鬱陶しかったが、いざ一人になると何かと不自由なことが多い。夫の有り難さが解り、愛おしいさから今では何処でも一緒という。「お父さんありがとう。これからも残りの人生を一緒に楽しみましょうね」と呟いた。

2015年6月2日火曜日

週間NY生活No.534 4/25/2015 「人生の放課後4」

      「団塊シニア層の夫婦の一人ひとり」

  団塊シニア層の夫婦は自分自身を見つめ直すためお互いに距離を置き始めると言われる。まず同じ寝室内でベットや布団を共にすることを避け、長じて子供が独立して空いた部屋にどちらかが移動し、共有の時間は食卓やリビングで持つ。また空き家になった両親の実家や、現役時代に購入したセカンドハウスに片方が移り住むこともある。法的には夫婦の関係を保ちながら、同居にこだわらず互いの自由を尊重して暮らすスタイルのを「卒婚」というが、双方が健康であれば成立する。

  「卒婚」に関してテレビが50歳以上の1500人に実施したアンケートによれば、半数以上の女性は関心あり、家事からの解放と夫との距離を持ちたいという。一方、男性は興味ない人が半数以上に達し「卒婚を考える妻はエゴの塊、夫婦は死ぬまで一緒」と多くの反発意見があったとは、ニールヤングのヒット曲「a man needs a maid 」の世界観だ。男女の考え方に温度差があるのは確かだし、それは墓問題にも繋がる。全国の既婚女性880人に行ったテレビの調査によると、10人に6人が夫の墓に入りたくないと回答。その理由は「知らない先祖と一緒は嫌」が最も多く4割で、次に「遠い・縁のない土地にある、夫の家族が嫌い」と続く。この結果を踏まえて既婚男性約1300人に「夫婦は一緒の墓に入るべきか?」の問いに6割強が「そう思う」と答えた。更に実況中継では「死ぬ時くらい自由にさせて!遺灰は海に蒔いて」という妻に対して夫は「そうは行かない」と反論。結論は、妻が先に逝ったら遺骨の一部をミニ骨壷に入れて保管し、その後、夫の墓に一緒に埋葬することで妥協する。夫婦の覆水盆に返らず、溝を流るだ。

ワイン王国No.58

    シャンパーニュとダイアモンド

 シャンパーニュを飲む度に、グラスの中でダイアモンドがキラリと光るような気がする。というのも、ダイアモンドが誕生する時と、シャンパーニュを開栓したときに勢いよくボトルからはじけるコルクの状況が似ているからだ。
 諸説あるが、ダイアモンドは高温・高圧の条件がそろった、ある限られた地域のマントルと地表の間で育つ。鉱物の中では珍しく炭素100パーセントの成分からなり、その炭素原子は自然界に存在するほかのどの物質よりも硬く結びついている(それで婚約指輪に用いられる)。その後、数億年から数十億年も地中に眠り、マグマの上昇に伴い母岩に包み込まれて勢いよく上昇し、マグマ内の膨張した気体が大部分水蒸気と二酸化炭素になり(シャンパーニュのボトルを振ったときの気体と同じ状態)、この強力な気体の膨張と噴出速度によりダイアモンドが地表に誕生する。もしもダイアモンドが上昇していく旅の途中、圧力が下がった状態で長時間高温にさらされると、これが運命の分かれ道となり、皮肉にもグラファイト(炭)に変質してしまう。
 ブッタが悟りの境地について、’’金剛心=ダイアモンドを得た心’’と表現したと言われるくらい、ダイアモンドはすべてを貫く純粋な透明感と輝きを放つ炭素の塊。それが人々の手によりファセットカット(宝石の加工方法)され、7色のスペクトルをすべて包括し光り輝く美の完成に達するまで多くのプロセスを経る。その昔、偶然生まれた泡立つワインから始まったというシャンパーニュ造りも、同じく人々の手により試行錯誤をくり返しながら究極のご褒美になった。ともに、ガイアである地球が生み出したものを、人類が悠久の時を経て完成させた最高傑作であり芸術品だ。
 ところで、私が初めてシャンパーニュを口にしたのは、かつてニューヨークに留学していたころ。サンクスギヴィング(感謝祭)当日、隣人夫婦のセカンドハウスに招かれた。素晴らしい欧風の絨毯と織物のソファー、主人の趣味である見事な刺しゅうと置物に囲まれ、暖炉の火がゆらゆらと燃えた、まるでおとぎ話にでも登場しそうな部屋で、勢いよくシュポンと栓が抜かれたボトルから、黄金色の液体がフルートグラスに注がれた。当時は銘柄など全く気にも留めなかったが、彼が取っておきのシャンパーニュだと話してくれたことが頭の片隅に刻まれている。細かくクリミーな泡が途切れることなく、グラスの底から立ち上がってくる不思議な飲み物を口にした時の感動と、アッという間にのどに消えた後にいつまでも続く心地よい余韻は忘れられない。
 今も毎年訪れるニューヨークでの楽しみのひとつは、膨大なシャンパーニュがストックされた専門店で、日本では入手しにくい銘柄やお気に入りを買い求め、それとマリアージュする料理を作り、友人らと晩餐を楽しむこと。

 ともあれ、グラスに注がれたシャンパーニュを見る度に感慨深くなる。それはロゼを除いた色合いにおいて、「ほとんどが、わずかに黄色味または茶色味を帯びており、ライトイエローが多い」というダイアモンドの価値を決める4C(carat、cut、color、clarity)のひとつであるカラーの定義と似ているからだ。

2015年5月20日水曜日

週間NY生活No530 3/28/2015「人生の放課後3」

      「放課後を楽しむ団塊世代富裕層」

 数年前から65歳を迎えて本格的な余暇生活に入った団塊世代は、年金を額面通り受給できる最後の世代だ。日本の個人金融資産も米国に次ぎ世界第2位で、その約6割を60歳以上の富裕層が占める。内閣府で行われた意識調査(平成23)によると、彼らの世帯1人当たりの総所得(平均世帯数1,56人)は197,4万円(公的年金、恩給が67,5%)で、全世帯(2,68人)の200,4万円と変わらない。貯蓄率に至っても1番高く、全世帯の16,64万円を上回る22,57万円(65歳以上)。その上、9割が持ち家である。負債も少なく暮らし向きに心配がないと答える人が70%に及ぶ。特に女性の経済的余裕度は男性よりも高い。


 男女共に趣味や楽しみは、テレビ・パソコン・旅行が上位を占める。以下、男性は散歩・新聞・雑誌と続き内向き傾向を見せるが、一方で女性は家族との団欒・買い物・友人、仲間との交際など外へと向かう。例えば、お洒落な女性が銀座中央通りに面した建物の中に次々と向かう先にあるのが女性専用健康麻雀教室。テレビでボケ防止と推奨されてから反響が大きく、賭けない・吸わない・飲まないが鉄則で、午前中から夕方まで先生に麻雀を教わり、その後デパートで買い物をして帰宅する。私も参加してみたことがあるが、団塊世代中心のご婦人方が真剣な眼差しとしなやかな指で雀士の如くパイを追う姿は新鮮だ。そして胸元には輝く宝石で象ったペンダント。伺ったところ、溺愛した亡き犬を片時も忘れないために写真を入れているそうだ。昼食時になり、各人が持参した彩り豊かなお弁当を広げて始まったお喋りに誘われたとき、このような華麗奔放な生き方もありかなと感じた。

2015年5月14日木曜日

週間NY生活No526 2/28/2015「人生の放課後2」


     「家族形態が変化しても不変な憶い」

  近年なぜ日本の家族形態は単独世帯になりつつあるのか。幾つかの要因を挙げてみると、第一にバブル崩壊後の長期に亘る不況と非正規雇用の増加により生み出された多くの低所得層の若者が家族を持てないこと。第二に女性の三従苦(産まれて→親、結婚して→夫、老いて→子)からの解放による晩婚、離婚、非婚化。第三に65歳以上の単独者の大増加などが思い当たる。2035年には7世帯のうち1世帯は単独高齢者になるといわれ、1985年に夫婦と子供を家族とする「家族類型」を前提に作られた年金制度は崩壊し、特に女性高齢単独者の生活困難が予測されている。

「お一人さま」が急増している昨今、制度設計の早急な見直しが迫られている。ところで、生涯「お一人さま」でもご先祖様はいる(両親がもっとも身近な先祖)。お彼岸やお盆になるとお墓参りに行ったり供養することは、生活の中に自然に溶け込んでいる行事だ。「お盆」が先祖をこちらにお迎えしてもてなすに対し、「お彼岸」は私たちが悟りの地である西方極楽浄土(彼岸)に歩み寄ること。年2回真西に太陽が沈む日を春分の日、秋分の日とそれぞれ定め、その前後3日間、六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定→智慧=般若波羅蜜)の修行をして、煩悩に苦しむ現実のこの世である「此岸」から「彼岸」に向かおうというわけだ。彼岸の語源はサンスクリット語の「paramita (波羅蜜多)」の漢訳「到彼岸」の略語。どうやら私たちの人生は「棚からぼた餅(牡丹餅)」とはいかないようだ。因みに今年の春分の日は3月21日なので、18~24日迄がお彼岸にあたる。

2015年3月20日金曜日

週間NY生活No.522 1/31/2015「人生の放課後1」

 団塊世代「できた子供」は「できた大人」となり、今現在も日本経済を引率

   なぜベビーブームが1947年~49年の3年間だけに集中したのか?それまで刑法の「堕胎罪」が有効であり、当時「できた子供」は漏れなく産まれたからだ。その後世界に先駆けて妊娠中絶を認める法律が成立したのだが、皮肉にも未だに続く人口減少の一要因になっている。 
   彼らは幼少の頃から大家族の中であらゆる知恵を自然と吸収し、同時期に教育による知識も身に付け、やがて日本の高度成長期を担う主役となって躍りでた。終戦後の昭和の貧しくても良き時代に育った彼らの胸は期待と希望で満ちあふれ、日本の社会に弾け飛んだ。2005年、国勢調査の結果を元に、巨大なボリュームの人口にあたる「団塊世代」の退職者が発生するという「2015年問題」などが揶揄されてきたが、現実には多くの企業が「継続雇用制度」を導入したことにより、60代年齢層の労働力が上昇してきた。かたや民放でも毎週、職人技を貫き通した伝統工芸品や、町工場にて国内外に向けた精密な部品を製作する「日本の職人さん」を紹介する人気番組がある。世界経済時計があるとすれば、華やかな時を刻むのは大手有名メーカーで裏でそれを支える要になっているのは彼らだ。後継者不足に悩みつつ、作業に入ると目も鋭くごっつい手が器用に動く。その傍ら家族を思いやる優しい眼差しは、既に他界している両親にも向けられ、仏壇で手を合わせる大きな背中には「できた子供」が垣間見られる。今後の超高齢社会を先導する役割、雇用、就労など社会参加の活動などにおける彼ら「できた大人」の活躍が期待されているのだ。