Jewelry sommeliere

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津延美衣(つのべみえ)NY州立大学FIT卒業。米国宝石学会鑑定有資格者(GIA-GG,AJP) 運命学・自然医学・アート・アロマテラピー・食文化などの知識を元に感動的な人生を描くプランナー・エッセイスト・キュレーター兼ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere) 美時間代表。

2016年3月6日日曜日

週刊NY生活No.574 3/5/16'「3月の誕生石アクアマリン」

                            アクアマリン(藍玉)
   限りなく透明な水色の海を彷彿させるアクアマリン(海水を意味するラテン語)はベリル(緑柱石)族で、その結晶は先端を水平にスパッと切り落としたような六角形の柱。ちなみに同じベリル族でも緑色はエメラルドになる。宝石は種類により人口の照明下では美しさの度合いが損なわれるが、アクアマリンに限り輝きを増すことから、中世ヨーロッパでは夜会用の宝石「夜の女王」として親しまれ、月光を浴びると幻想的に煌めくことから昔から聖なる石といわれる。清らかな水面を見ながら深呼吸すると何かしら爽快な気分になるが、水と非常に関連性が強いとされるこの石は、身に付けると私たちの内面に滞ってしまった老廃物を浄化するフィルターの役目となり、気持ちのバランスを整え安定感をもたらすという。

  アクアマリンは特に中世のローマ人を虜にしたようだ。第26代ローマ教皇・軍人法王の 'ユリウス二世' (1503~1513年在位)は好戦的な教皇であった反面、芸術をこよなく愛し、ラファエロに自らの肖像画を、ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の天井画を描かせ、バチカン美術館を興隆させるなどルネサンス芸術の最盛期をもたらした。塩野七生は『神の代理人』の中で、ユリウス二世は、5万ドゥカード(当時の貨幣)をかけて作らせた黄金と宝石に輝く'三重冠'(教会と法王の尊厳を示す)を頭上に被り何度か行軍したと書いている。それら宝石の中に、一番大きく美しいものの一つである約5センチ四方のアクアマリンがはめられていたという。

2016年2月16日火曜日

週刊NY生活No.570 2/6/16'「2月の誕生石アメシスト」

                           アメシスト(紫水晶)

   2月の誕生石「アメシスト」(紫水晶)は深い霊的作用を持つと言われる。旧約聖書の中で、祭司長がイスラエルの12部族を象徴する「裁きの胸当て」に飾られた12の宝石の1つである。また、ヒーリング効果が非常に高く、キリスト教の世界では「司教の石」として知られている。
  フランスの作家アンドレ・ジットが書いた不朽の名作「狭き門」の中に、まるで物語のキーポイントを握るかのように、アメシストで作られた古くて小さな十字架が登場する。主人公のジェロームが愛する、従姉アリサは母の形見であるそれを身につけている。彼女も彼を愛するが故に完璧をめざして神への道を歩むが、進めば進むほど心とは裏腹に彼との距離は開き、終には苦悩しながら死しんでいく。
  人間や動物には生命活動や精神をコントロールするため、身体の中心線に沿ってエネルギーの中枢となる「7つのチャクラ」があると言われる。アメシストの紫色は頭頂のチャクラ(霊魂の聖域)にあたるとされ、脊椎の基部にあたる一番下のチャクラ(生命・肉体)の赤色が、青色の喉のチャクラ(創造力)まで上昇すると混じり合い、霊的な本質は悲しみに鍛えられ高貴なものになる。そして人は神の愛により覚醒して無私の奉仕をするという。高い霊性を認めていた初期のクリスチャンは、アメシストを自己犠牲、純潔、慈愛のシンボルと見なした。
   ちなみにアメシストの指輪をはめるのは、霊的である中指がお勧めだ。

2016年1月17日日曜日

週刊NY生活No.566 1/1/2016「人生の放課後12」

                                  シニア層の究極の棲家

  1970年に入り、日本の65歳以上の人口比率が7%を超え「高齢化社会」の道を加速し始めた頃(現在は25%を越えた超高齢化社会)、旧国鉄中央線の車両に優先席を設けた。その愛称「シルバーシート」の語源は、高齢者の銀色の頭髪から来たと思いきや優先席にたまたま使用された銀色の布だった。そこから、忌避されてきた高齢者の呼称「年寄り」「老人」に代わり、「シルバー」が、ある学者の発案より、少し粋な「熟年」が誕生した。
  そうした忌避感が残る「老人ホーム」には一般的に、年齢を重ねるに従い心身に問題が生じて日常生活に困難をきたすようになった親の面倒を見られない子供らが、やむなく親を入所させるケースが多いと見聞きする。数十年住み慣れた棲家から突然、全く知らない環境に移されるのだからボケも一気に進み、体調が悪化するのも当然だ。


 「まだ頭がしっかりしているうちに自ら入居したくなるような施設があれば、人生の放課後も楽しめるのに」と思っていた矢先、田園都市線にある高級老人ホームの見学に誘われ、物見遊山で行ってきた。豪華なシャンデリアが吊るされた玄関が住人を迎え、病院・レストラン(軽い正装が基準)・バーカウンター・図書室・娯楽室・広場・庭(散歩や菜園も楽しめる)などを併設する高級集合住宅だ。一般居室は1LDKと2LDKの2タイプ (56㎡~100㎡)があり、そこから通勤している方もいる。(因みに現在は満室)夫婦で入居して片方の介護状態が重くなったときの介護居室もあり、併用でサポートしてくれるという。館内は廊下に掛けられた有名な絵画、陶器、アップライトピアノ、蔵書など入居者が寄付した逸品が七光している。面白いことに男性陣はT大とK大出身の派閥があり何かと競っていて、平和ボケとは無縁らしい(笑)。

2015年12月8日火曜日

週間NY生活No.562 11/28/2015「人生の放課後11」

                       シニア層の終の棲家の選択

   最近日本では横浜の欠陥マンション偽装事件をきっかけに、全国で同じような症例が次々に露見して大きな波紋を呼んでいる。建設は有名大手不動産と施工業社によるもので、建物を支える杭が強固な支持層まで届かず、建物の一部が傾いているといった手抜き工事が発覚したからだ。家は人生最大の買物と言われ、数十年のローンを抱えている住人にとってはたまったものではない。そもそもマンションの欠陥問題は露見しにくい。それは住民のなかに、将来転売して介護サービスなどが受けられる終の棲家に移ることを検討している人たちがいるためで、資産価値が損なわれるような情報が表に出にくいからだ。

  さて、加齢とともにリスクが高まる脳疾患や心臓疾患などは日常生活に支障をきたすだけでなく、命取りになることもある。そうした不安を取り除いてくれる介護付きの老人ホームもあるが、近年はそれよりも敷居が低い、国の「高齢者住まい法」の改正を受けて、2011年10月以降に誕生した「サービス付き高齢者向け住宅施設」賃貸借方式が話題を呼んでいる。2020年までに整備を急ピッチで進め60万戸を建設する予定だ。居室は台所、水洗便所、収納設備、洗面・浴室と一般的住居に準じており、最低価格帯は25平方メートル以上(食堂やリビングなど共同スペースがある場合は18平方メートル以上)からで、贅沢を言わなければ生活に必要な身の回り品や大切な写真や思い出の品などを持ち込める。提供されるサービスは安否確認と生活相談。食事など日常生活全般はオプションで選べる。入所基準は60歳以上が(要支援者は同居者も)基本。やはり、終棲家の沙汰まで金次第ということか「低価格帯の物件は人気があるので早めに申し込んで下さい」と。

2015年12月2日水曜日

週間NY生活No.558 10/24/2015「人生の放課後10」

                        シニア層の快適住宅事情

   今や世界一の長寿大国に成長した日本。65歳以上の高齢者人口は現在約4割に達し、その約半数が高齢単身・夫婦世帯と言われている。こうした状況から、不動産でも家族向けマンションの売れ行きが低迷するなか、シニア層向けの分譲マンションが絶頂期を迎えている。
  1960年代後半の高度成長期につれて、商業施設を造らない英国式の緑に囲まれた静かな環境の街づくりが鉄道の延伸と共に脚光を浴びた。あれから数十年、当時戸建てに憧れて住み始めた人々は年を重ね、買い物や駅に行くまでの距離が遠く感じるようになり、途上の坂道は彼らの行く手を阻む。そのような諸行無常のなか、渋谷を拠点とする大手電鉄会社が、彼らの不安で停滞しているどんよりした暗雲を一掃するだけではなく、新鮮な風を送り込むようなアイデアを打ち出した。つまり、街が住民の年齢と共に年を取るのではなく、様々な世代が循環しながら成長できる安心で快適な「世代循環型街づくり」が計画されたのだ。

  その一つとして、駅前にシニア層向け(段差のないバリアフリーの2LDK中心)のマンションを建設した。入居中の完熟年夫婦がインタビューに答えて、子供が独立して以来、家族同然に飼っていたという犬の写真を見せながら「主人とこの子の3人でこれからの人生を謳歌したいわ」と微笑む。駅まで雨にも濡れず足を運べるだけではなく、その途中にはクリニックやデイサービス、商店などがある。またインターネットによる宅配をはじめとする40種類以上の高齢者をサポートするサービスも受けられる。そして彼らが手放した空き家はリノベーションして、子育て世代に引き渡すという。その結果、駅周辺は年寄りからベビーカーを押す若いファミリー世代で活気に溢れ出した。

2015年11月19日木曜日

週間NY生活No.554 9/26/2015「人生の放課後9」

                    シニア層お一人さまの住宅事情

   一昔前、離れて暮らす親を心配する子供のために、有名電機メーカーが興味深い電気ポットを開発した。急須にお湯を注ぐとその反応が子供に届き、親の安否がわかるという仕掛けだ。ほのぼのとするテレビCMだったが、生涯独身、伴侶や子供と生き別れ死に別れによるお一人さまはそうはいかない。内閣府によると、平成27年度の65歳以上の単独世帯は推計で約600万世帯。そのうち持ち家率は約65%。高齢期に向かい身体機能が低下する上で必要になる家のリフォーム、一人になりがらんとした家、年金だけでは足りない固定資産税を含めた生活費など問題は山積し、今後何処でどう暮らすかの選択を迫られる。安心なのは老人ホームや高齢者用住宅に入居することだが、懐などの諸事情から入居できない人たちも多い。礼金や更新料もなく家賃が安い高齢者向けの公営住宅もあるが、抽選制で倍率は高い。いずれにしても入居する上で必要なのが保証人。貸主は、家賃の滞納と孤独死を懸念するからだ。そのハードルを越えられないお一人さまは、やむなく本来は生活保護者用の一時的な宿泊施設である「ドヤ (簡易宿泊所)」で、劣悪な居住環境に耐えながら長期滞在を余儀なくされる。今年5月そうした「ドヤ」で火災があり、犠牲者10人のうち大半が高齢者だった。
  一方、東京近郊の大学が移転して空き家になった学生寮を買い取り、月額数万円の家賃で彼らに開放する救世主も出てきた。貸主曰く、「高齢者は、夜逃げすることもないし、他界した人の後の部屋でも気にしないよ」と。その一人に老人ホームに入るのが嫌で入居したという未亡人がいた。小さな部屋の中を占領する大きな仏壇が居心地悪そうに見えたのは私だけであろうか?

  

2015年11月9日月曜日

週間NY生活No550 8/22/2015「人生の放課後8」

                         シニア層は片付けが苦手

  現代社会の真骨頂はほとんどの家庭でモノが溢れ返り、それらが家の中を占領していることだ。加齢と共に片付けが億劫で先延ばしになり、何処に何を置いたかも忘れ、再度同じモノを購入してはモノが増える。贈答品の箱山だけでなく、商品やお弁当など購入時の紙袋から割り箸まで取って置く始末。モノにつまずき転んで骨折したり、上の棚からモノが落ちてきて怪我をしたりといった事態になっても、どこをどうやって片付けたら良いのやらわからない。そんな悩みを抱えたシニア層が急増しており、部屋の片付けを指南するプロや書籍も増え、テレビでは特集を組むようになった。
  まず片付けの基本は数年間使用しなかったモノを処分すること。だがそれが儘ならない。一番の理由は「もったいない」からで、「いつか使うだろう、着るだろう、読むだろう」という先送りの考えだ。そもそも「もったいない」は和製漢語「勿体」を「無し」で否定した言葉であり、「妥当でない」「不届きだ」という意味で用いらた。転じて、「自分には不相応である」「ありがたい」「粗末に扱われて惜しい」などに広がった。環境保護活動家でノーベル賞受賞者のワンガリ・マータイが約10年前、環境問題を考える際の重要な概念として「もったいない」という言葉を使用し、世界共通の言葉となったことは知られている。
  テレビを観ていたら、片付けの達人が緑寿と古希を迎えた夫婦を訪ねて実際に部屋の整理整頓を手伝っていた。時間の経過と共に部屋はまるで集中ダイエットをしたかのようにスッキリとした。埃を払われた主人の両親の写真も棚の上で満足そうだ。長男ではないので仏壇を持たないが、「それに代わるコンパクトな祭壇があったらなあ・・」とつぶやいている気がした。