Jewelry sommeliere

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NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2021年8月9日月曜日

週刊NY生活No.815 4/17/21'宝石伝説39山梨と宝石「世界で唯一のクロスフォーカットの誕生」12

      山梨と宝石「世界で唯一のクロスフォーカットの誕生」12



 「これまでどこにもなかったもの」を創造する。宝石の輸入商から製品を扱うといった業態転換(1999年)を決断したサンリのオウ(土橋社長)は、ファッションに関わる必要性も感じていた。

 1980年に立ち上げた土橋宝石貿易時代を経て、株式会社シバトを設立した際には社員は5~6人ほどで年商も億単位になっており順風満帆な道を歩んできたが、起業して10年以上が過ぎた90年代にバブルが崩壊。日本の宝石業界は大ダメージを負い、同氏の会社も回収できない資金が発生、売上も最盛期の3分の1までへり経営危機に陥っていく。「宝石の輸入・販売で他社と差別化をするのはむずかしく価格競争になっていく。これからの時代はクリエイティビティ・オリジナリティを発揮して付加価値を高めないとダメだと思った」とサンリのオウは語る。基本的にポジティブ思考な面をのぞかせる氏はものごとに向かっていく強いエネルギーを秘めており、また「成功させたい」という気持ちも強く、その信念は周囲の者に伝わるだけではなく、それに導かれるような現象がおこり、イメージしていることがどんどん具現化していくのだ。宝石を熟知しこよなく愛していた氏の脳裏に「何か世の中に未だない宝石のカット」と浮かぶ。すると、ニュースにて、ダイヤモンドを八角形に仕上げるフランダースカット(1987年、ベルギーのフランダース地方で誕生したその美しい形と通常のブリリアントカットのように光をきれいに反射させる2つの魅力を持ちあわせた完璧なカットだが、原石を通常よりも多く削る勿体なさから普及はしずらい)が1995年、特許を取得したことを知る。そして、氏はいくつものカット形態を考えていた矢先、ダイヤモンドの一番歩留まりがよく、ラウンドブリリアントカットの輝きを創造できるのは、宝石の中に十字が見えるものだと気づく。数年後の2001年、日本で唯一、宝石のカット形状におけるダイヤモンドの切削技法「クロスフォーカット」で特許を取得する。46面体のカットで反射光線の効果を最大に引き出し、石の中に十字の輝きが浮かび上がるとして国内のみならず海外でも話題をさらった。ちなみに、ことわざに「好きこそものの上手なれ」とあるが、開発段階から特許を視野に入れて戦略的に生み出されこのカットは、発案から開発までサンリのオウが1人で行ったというから頭が下がる。


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