山梨と宝石「歌舞伎の演目『桜姫東文章』とジュエリー」18
日本の歴史でもある歌舞伎の公演は通常、昼・夜の二部制で、上演時間が4~5時間ほどと長いため、時間の余裕のある年代の客層がおのずと多くなる。一幕だけ短時間見るることのできる廉価な幕見席を利用する手段もあるが、近年の歌舞伎に関する調査によると観たことがある人は全体の約2割で、そのなかで1、2回程の人が過半数を占める。その消極的な理由の最大なものは観に行くキッカケがないことだ。また演目のあらすじがわからなく面白くないことが挙げられる。
さて、そのキッカケ作りになりそうなのが、サンリ王の会社クロスフォーと歌舞伎役者の九團次氏のプロデュースにより誕生したジュエリーブランド【リゾネイト】で、「伝統と革新」をコンセプトに、第一弾として歌舞伎を語る上の立役者である5人の女性をイメージして制作された【花ひらく】シリーズだ。最初に登場した歌舞伎の創始者でもある出雲阿国に次ぐジュエリーのモデルとして登場するのが『桜姫東文章』のヒロインである桜姫。4世鶴屋南北による『東海道四谷怪談』に並ぶ歌舞伎の人気演目で、南北ならではの退廃的な美があふれる傑作だと知られている。
そのあらすじを要約すると、桜姫、権助、清玄を中心に話は展開していく。桜姫は高貴な身でありながら、お家転覆を謀られ父親、兄弟まで殺されたうえ子どもまではらませた悪の魅力を放つ権助に惚れ自ら遊女に身を落とすはめになる。一方、清玄は昔、惚れ込んだ美しい稚児の白菊丸と心中を測ったが自分だけ死にきれずやがて高層となり、その17年後、生まれつき左の手が開かずにいた桜姫にであい念仏を唱えたところ、掌が開いて中から香箱の蓋(昔心中を図ったときに白菊丸が「清玄」と記したもの)が現れたことで、桜姫が白菊丸の生まれ変わりだと確信して因果の糸に執着するように一方的に桜姫を追いかけ、身を滅ぼしてもなお亡霊として現れる。桜姫は極悪の権助一筋だが、その権助は己の出世のみを考えている。彼女はかなり破天荒な運命に翻弄されながら流転の人生を歩むが最後には信念を貫き実家の再興を果たす。男女の性、輪廻転生、人間の持つ欲望と混沌とした世界が華やかな舞台で繰り広がる。
来春この演目はシネマ歌舞伎最新作として公開が決定しているが、桜姫の信念をモチーフにした桜吹雪が舞うようなデザインのジュエリーを身に付けて実際の舞台も観たいものだ。
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