カルティエ「世界初の男性用腕時計」3
1902年、ルイ・カルティエはロンドンのニュー・バーリントン通り4番地に支店をオープンし、弟のピエール・C・カルティエに経営を任せる。1904年以降、ルイ・カルティエは祖父(ルイ=フランソワ・カルティエ)より譲り受けたジュエリーへの審美眼や経営のノウハウを武器に、イギリス、スペイン、ポルトガル、ロシアなどさまざまな王室御用達を実現していく。1895年には、宝石を爪留手法で一つだけはめたソリテールリングを発表した以降、プラチナとダイヤモンドによるソリテールはエンゲージリングとして世の女性たちの定番となったが、彼が持つ天性の才能はジュエリーはもとより、礎となる時計にも現れた。宝石工房として出発したカルティエの大きな功績は、世界初の男性向け腕時計を製造したことにある。当時、時刻を確かめるのにポケットから出し入れする懐中時計が主流だったが、彼の友人で飛行士のアルベルト・サントス・デュモンより「操縦桿から手を離さずに時間を確認したい」と腕時計製作の相談を受け、彼の名前をそのまま冠した角型レザーストラップの腕時計「サントス」を製造してプレゼントした。サントスに続き、タンク、パシャ、パンテール、ベニュワールなどの名品を生み出し、今でも定番時計として世界中の人々に親しまれている。一方、1912年以降「時計製造の奇跡」と称される、針がメカニズムに繋がっておらず、クリスタルの中に浮かんでいるような印象を与える魅惑の置時計「ミステリークロック」を世にだす。奇術師J・U・ロベール=ウーダンが考案し、メゾンの時計職人モーリス・クーエが数ヶ月に及び完成させ、カルティエの手で何度も綺麗な装飾が施された。
2009年、スイスに時計専門の自社工房を設立して、ムーブメントの設計・製造から時計の組み立てを一貫して自社で行うマニファクチュールを開始する。自社の好みやデザインに合うような時計を製造できるが、これを実現するには高い技術力と資本力が要求される。その翌年、新たな男性用の定番となるカリブル・ドゥ・カルティエによって、完全自社製造ムーブメントを搭載した、本格機械式時計を発表する。そしてカルティエは他の老舗時計メーカーと遜色のない時計製造の歴史と技術を構築して行く。ちなみに、名門ブランド時計メーカーのロレックスが創業されたのは1905年だ。
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