Jewelry sommeliere

自分の写真
NY州立大学FIT卒業。 米国宝石学会鑑定・鑑別有資格(GIA-GG,AJP)。 CMモデル、イベント通訳コンパニオン、イラストレーターなどを経て、両親の仕事を手伝い十数カ国訪問。現在「美時間」代表。今迄培ってきた運命学、自然医学、アロマテラピー、食文化、宝石学などの知識を生かし、健康で楽しく感動的な人生を描くプランナー、キュレーター、エッセイスト、ジュエリーソムリエール(Jewelry sommeliere)

2011年12月15日木曜日

人間万事塞翁が馬

   一昨日のニューヨーク行きのこと。エコノミークラスの飛行機への搭乗は、なるべ遅い方が良いことを長年の経験から熟知している私は、搭乗の最終案内を待ちさっそうとゲイトに向かった。
  ふつう飛行機は一定の人数が集まらない時は提携会社との共同運行便になり、すし詰め状態にして飛ばすことがある。ところが、今回は八割から九割うまっていたのでそれはないと踏み、窓側の空いている、三つ並んでいる真ん中の席をネットでリザーブしておいた。
   機内の通路を進み、自分の座席番号にたどり着く。すでに通路側に座っていた年配の女性(何人かのツアーの一人)は怪訝そうな顔をして、「ここですか?」と私に尋ねてきたのですかさず、「はい!」と元気よく答えて「ごめんなさい」と言いながら、彼女を押しのけるように真ん中に腰を下ろす(長時間のフライトは意外と窓側は人気がなく、人に気兼ねなく自由に出入りできる通路側が先にうまるのだ)。そうこうしているうちにゲイトが閉まり、これで少なくとも窓側の席は空いているし足をのばせると内心笑みがこぼれた。すると隣のその女性が「移動するので」と言い放ち席を立ったのだ。「ラッキー」と思い、さっそく三つ並んだ席を陣取り気分よく出発を待つ。普段から何事においても遅れがちで間が悪い私だが、この時ばかりはギリギリ勝負師の面目が立ち乾杯(苦笑)!
   ところが、もう出発かなと思っていた矢先、「お急ぎのところお客様には多大な迷惑をおかけしますが、搭乗機の不良整備が発覚したため一時間ほど遅れての出発になります」とアナウンスが流れた。出鼻を挫かれた。睡眠不足が祟って交感神経がとがったままだから寝ようにも眠れない。すると、もう少し遅れるのが判明し、いったん飛行機から下りる許可が出たのである。その時、もうろうとしていた頭の中に一筋のきらめきが。
  ネットの勧誘で得たクレジットカードの特典で、入会後数ヶ月以内以内に一定の金額を使えば Priority Passという、提携する航空会社(ビジネスクラス以上の人々が対象)のラウンジを利用できるカードを持参していた。成田の第一ターミナルで使用できるのは大韓航空とわかり、足を運んだ(今回のフライトはデルタ航空だが)。個人的な感想だが、デルタより大韓航空のラウンジの方が好きだ。日本に限るが、おにぎりが何種類か必ず用意されていて意外と美味しい。お酒を飲み神経のとんがりを丸くして機内で睡眠をとろうと、まず生ビールで乾ききったのどを潤し、続いて2007年ボルドーの赤ワインをおつまみと。締めは日本茶に高菜としゃけのおにぎり。そして飽き足らぬ欲望がポケットにそっとおにぎり二つ忍ばせる。エコノミー食攻群が頭をよぎったからだ。そのうち機内に戻る時間に。結局二時間遅れの出発となった。
  どういうわけか到着は一時間遅れですんだので、良かったと思ったのも束の間。イミグレーションのノンレジデンス側は長蛇の列。仕方なく並んでいると、途中から案内係が一部の人たちをすいているレジデンス側に誘導し始めた。私も意を決してロープをくぐり横入りをしたのだが、気がつけば私は最後の方でようやくイミグレを通過。預けた荷物がベルトコンベアーで回転するところはすでに止まり、いくつかの荷物が寂しそうに下に並べられていた。それらが薄暗い中、まるで保育園の幼児が首を長くして保護者のお迎えを待っているように見えた。
   荷物を引きずり、最終関門の係員に名前・生年月日・変な荷物は預かってきていないかどうかなど記述した書類を渡したその時、「ウッウー」と係員が小さな声を立てたので一瞬たじろぐと、何のことはなく「You looks like 15years younger!!」と言われた。「Thank you!」と受答したとたん自然に背筋が伸び、さっそうとその場を後にした。娘〇〇番茶も出花なんて意気揚々と(笑)。
   空は紺色の水彩絵の具を白い紙に薄くまだらにのばした感じ。久しぶりにニューヨーク特有の湿気の無い冷たい風を満喫しながらグランドセントラル行きのバスを待った。

2011年11月1日火曜日

カボチャはパンプキンかスクウオッシュか?

 ハロウィン(10月31日)が近づき、ここ東京のデパートやスーパーマーケットに行くと、こわかわいい顔が細工されたオレンジ色のパンプキンがお出迎えしてくれる。もともとヨーロッパ(ケルト人)を起源とする民俗行事の収穫感謝祭がいつのまにか多民族のあいだでも浸透してきたのだ。
 今や恒例となっている子供たちが仮装して近所の家をたずね、「trick or treat」といいながらお菓子をねだるのは、中世のなごりで、とうじ祭り用の食料をもらって歩いた農民の様子をまねたものとも言われている。子供たちは仲間とミーティングをくりかえし、仮装にありったけの知恵を絞りその日を待つ。そして、「お菓子をちょうだい。くれないと悪いことするからね!」と、かなりの強行でせまる。この欧米ならではの能動的なものに対して、日本では祭りに行ってまず、はちまきを受け取る。そして、山車を引っ張りながら町を練り歩いたあと、そのはちまきと引き換えにお菓子をもらう。(わたしも小さい頃、母や姉に付き添ってもらい参加した。透明な袋の中身はたいてい、大きくて茶色い長十郎の梨と、お煎にキャラメル、チョコレート。それがとても嬉しかったことを今でも鮮明に覚えている)。
お菓子を手に入れる方法に違いはあるが、双方の共通点は、それぞれの子供たちが、おそらく初めて、家庭以外の社会に参加した報酬として食べ物を得ること。手段はどうであれ、五穀豊穣の自然神が祭りを通じて、「はじめに食ありき」といった大切な食育を促して下さっているんだと、ふと思った。
 ところで、ハロウィンは秋の収穫を祝うのと共に悪霊を追い出すお祭りで、Jack-o-'lantern(かぼちゃをくり抜き目・鼻・口をつけた提灯)黒猫、ガイコツ、クモ、クモの巣などを飾る。使用されるそのカボチャは秋を象徴する美味しそうなオレンジ色だが、残念なことに今は手をくわえられており観賞用で、食用ではない。(改良前、むかしは食べていたとか)。
 現在栽培されているカボチャ(南瓜)はウリ科カボチャ属(学名 Cucubita)で、3種類に大きく分けられる。1、西洋カボチャ(栗カボチャともいわれ、ホクホクしていて甘みが強い)。2、東洋カボチャ(日本カボチャの「黒皮南瓜、鹿ヶ谷南瓜」バターナットゥ、スクウオッシュなど)。3、ペポカボチャ(ドングリカボチャ、キンシウリ、ズッキーニなどと、このなかで、ハロウィン用オレンジ色の品種はオータムゴールドで、北米でPumpkinという)。これ以外は総称Squashと呼ばれ、日本のカボチャはkabocha squash(カボチャスクウオッシュ)と呼ばれているいるのだから、なんともややっこしい。

さて、毎年行われるニューヨークのビレッジで開催されるハロウィンパレードは、今年で39年目。ゲイを中心に老若男女、白・黒・黄・褐色など本来の地肌がかくれて誰なのか分からなくなる位の化粧をほどこし、まるで歩くネオン街のようなサイケな色調とド派手なデザインのコスチュームできめた彼らが、目も覚めるような底冷えする暗闇の中から、何処からとも無くゾロゾロと湧いてくるのだからそれだけで息をのむ。そして、変幻自在に踊りだしたり、何ものかに取り付かれたような劇的なパフォーマーにかわる。幼子は寒さも手伝ってか、親にしがみつき小刻みに震えだすことも。世界最大級といっても過言ではないくらいのアーティスティックな迫力と面白さは、行って見なければ体感できない。
耐寒もかくごでね!

2011年10月10日月曜日

蓮女楽修美(レンニョラクシュミー)

蓮華の目と肌を持ち蓮華の衣をまとった、美と豊穣と幸運を司るヒンドゥー経に登場する女神ラクシュミー(吉祥天として仏教、密教にも登場)。可憐でありながら妖艶漂うそのさまに虜になったアスラ、インドラ神など彼女を手に入れようと試みるが、その移り気の性格もあいまってするりとかわされたらしい。やがて、最高神(宇宙の根本原理である創造、維持、破壊の三神)の維持神=ヴィシュヌ神の妃に収まる。
ところが、収まりきれない女神としての思いは、約1億4000年前頃から地球の泥水面に根をおろし、毎年初夏の訪れとともに開花する。
泥水の中から緑葉脈のあいだを迷いなくまっすぐに立ち上がる。タイムスリップさせるほどの浮世離れしたその姿は、目を奪われるほどのむらさきがかった赤の彩色で、丸みを帯びた十二単を装ったような花弁が、繊細でありながら勇敢に躍動感みなぎる。
「現世で人生の花を咲かせなさい。いずれその花の中には心の実りが訪れます。それは、淀んだ水であればあるほど大輪の花になるのよ」。と、風と共にささやいている気がした。

いつまでも可憐に

華蓮
数ヶ月前偶然、子供の頭くらいの大きさの桃色花弁を広げた蓮の花で覆われた
不忍池に、我を忘れて立ちすくんだ。
濁ったどろんこの水にも関わらず、まっすぐに凛としてたたずむ控えめで
ありながら華麗なその姿に心うばわれた。
「混沌としている世の中でも捨てたものではないな」と呟きながらその場を
後にした。

私はいつまでもかれん(笑)