蓮華の目と肌を持ち蓮華の衣をまとった、美と豊穣と幸運を司るヒンドゥー経に登場する女神ラクシュミー(吉祥天として仏教、密教にも登場)。可憐でありながら妖艶漂うそのさまに虜になったアスラ、インドラ神など彼女を手に入れようと試みるが、その移り気の性格もあいまってするりとかわされたらしい。やがて、最高神(宇宙の根本原理である創造、維持、破壊の三神)の維持神=ヴィシュヌ神の妃に収まる。
ところが、収まりきれない女神としての思いは、約1億4000年前頃から地球の泥水面に根をおろし、毎年初夏の訪れとともに開花する。
泥水の中から緑葉脈のあいだを迷いなくまっすぐに立ち上がる。タイムスリップさせるほどの浮世離れしたその姿は、目を奪われるほどのむらさきがかった赤の彩色で、丸みを帯びた十二単を装ったような花弁が、繊細でありながら勇敢に躍動感みなぎる。
「現世で人生の花を咲かせなさい。いずれその花の中には心の実りが訪れます。それは、淀んだ水であればあるほど大輪の花になるのよ」。と、風と共にささやいている気がした。
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