山梨と宝石「歌舞伎の演目『暫』」とジュエリー22
「暫(しばらく)」とは歌舞伎十八番の1つで、悪人が善人の命を奪おうとしている危機一髪のとき
正義が現れ「しばらく」と大声をかけ超人的な力で荒れて救う。そのルーツは江戸時代で年に1度開かれた「顔見世」と呼ばれるおめでたい歌舞伎興行にある。上演作品のどこかに、ヒーローが「しばらく」と放ちながら登場し、人々を悪人の手から救うシーンを必ず入ることになっていたのだ。明治時代(1895)九代目市川團十郎がここだけを独立させて上演し、それ以降「暫」という1つの作品として現在に受け継がれるが、ストーリーよりも様式化された演出を楽しむ演目といわれる。悪人役は公家姿の清原武衡、正義感あふれる主人公は鎌倉権五郎で、その出立ちは顔に怒り心をあらわす筋隈を紅で描き、頭は角前髪つき両サイドに5本ずつ束ねられた「5本車鬢」(ちなみに前髪があるのは元服を行う前の少年)に侍烏帽子。衣装は、異様に大きな柿色の武士の礼服長素襖に腰帯、その背中には力強さを表す太い綱のような仁王たすきをし、袖は芯張りを入れた巨大な座布団のような形でその中心に市川家の三升紋が入る。巨人を思わせるために長袴の中には高さ約30cmの足つぎをはき腰には格別に長い大太刀を佩びている、まさに「歌舞伎」の語源である「傾(かぶ)き者」(常軌を逸した奇抜な格好・身なり)そのものだ。荒ぶるこの演技の役は、勢いのある強さを表現するため扮装はかなり大掛かりで日頃の鍛錬なしには勤まらないという。
ところで、江戸時代に歌舞伎役者の中でも特に人気を誇り、大衆を魅了した者を「千両役者」と呼ぶが、実際に江戸中期大阪にある佐渡島座にて二代目市川團十郎が二千両(2億5600万円)で迎えられたという記録が残っている。
さて、千両役者シリーズのジュエリーが(株)クロスフォー(市川九團次氏のプロデュース)からお目見えした。その1つが商品名【枡】。暫の着物に描かれた三紋枡をモチーフにしたもので、勢いとパワーが感じられるデザインだ。
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