山梨と宝石「世界第1.2位の宝石研磨・加工地」3
各国から山梨県甲府に宝石関係の業者が訪れるのは、日本の職人のもつ生真面目・心意気・手先の器用さなどによる。美しいジュエリー制作を心がけて見えないところまで注意を払い、最後の工程である石留めに至るまで一瞬たりとも手を抜かず宝石を仕上げていく職人技は海外からも注目されているのだ。彼らがジュエリーの制作技術などを争う技能五輪全国大会でメダルを獲得するのも納得できる。さらに山梨は金属の鑑定機関も有しており、厳しい品質を追求した上での金やプラチナを使用した宝飾品のみならず、宝石で工芸品も制作している。そして世界一の「宝石研磨・加工地」ドイツ西部にあるイーダー・オーバシュタインに次ぐメッカとなった。
世界一の場所は経済の中心地フランクフルトから車で約2時間程度に位置する。小さな宝石の街だがその歴史は古く、豊富に産出されたメノウ細工は地域の特産品で、16世紀には最初の宝石研磨工房が作られていた。17世紀~18世紀のヨーロッパは絶対主義のもとで、当時は宮廷を中心とする文化が栄えていた。その頃から貴族の間で流行していたカメオ細工を含む宝石彫刻は特に有名だった。ドイツ人の生来勤勉頑固な気質をもち、几帳面で正確無比の素晴らしいカットをするその高度な技術は、現在に至るもここの彫刻職人しか受け継いでいないといわれ、現在も10名ほどの彫刻家が活躍しているという。19世紀の後半には約150カ所の工房を超える宝石の街に発展していくがやがて、地元で採れたメノウの枯渇もあいまってそれだけでは商業的需要を満たせなくなった。そこで長い年月で培われた技術を生かし、世界中の宝石鉱物を輸入して研磨することに活路を開いた。今もなお宝石加工の中心地で、鉱物博物館もかまえる観光名所になっている。
ちなみに、メノウは水晶と同じ石英ファミリー(同じ結晶系)に族し、カルセドニー(玉髄)と呼ばれる。水晶の形態が柱状に対して、メノウは潜晶質(肉眼では分からない非常に小さい結晶の集まり)。昨今、門外不出のレシピによる手彫りの最高級カメオは、主流であるブラジル産の複数層ある縞状メノウのわずか1~3%程度しか取れない部分によるもので貴重な宝石となる。
0 件のコメント:
コメントを投稿